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    デデデ陛下のおむつ

    アニメ版『星のカービィ』72話 「ワドルディ売ります」(2003年放映)のちょっとした謎についての考察。

    72話で、ワドルディを全部売ってしまったデデデ大王が、側近のエスカルゴンと以下のような会話をする場面がある。

    「おやつは?」
    「自分で食べれば」
    「食事は?」
    「自分」
    「皿洗いは?」
    「自分」
    「洗濯は?」
    「アイロンがけは? 」
    「おむつの取り替えは!?」
    「誰がワシの面倒を……」


    この「おむつの取りかえ」というのが、ごく一部のファンの間で謎とされた。
    「デデデ陛下は、おむつをしているのか? 」
    服が並べられるだけだが、アニメ版のデデデ大王には第12話 「デデデ城のユーレイ 」で一応着替え場面があり、青い肌着を着ているわけではなさそうなのだ。
    つまり、裸に三角を並べた模様の筒状の服を着て、赤いガウンをはおり、冠をかぶっている服装だと推測されている。
    「デデデはおむつどころか、パンツすらはいていないみたいなのに、何のジョークだ」ってこと。
    もしかして昼間はノーパンだが、夜トイレにいけなくなったときの、おねしょ防止のためにパジャマの下におむつをしているのかもしれない。

    比喩か実際にはいているのかはわからないながら、おおむね「デデデ陛下はおむつが必要なほどにお子様」みたいな解釈を、少なくとも筆者はしていた。
    だが、筆者は以前に似たような言い回しのある小説を読んだことがあったので、気になって再読してみた。

    「会社会社っていうけど、あなたが最後にしなびた青菜みたいになって倒れても、会社はあなたのオムツを替えちゃくれないのよ」二言目にはオムツだ。「言っとくけどあたしだって、今みたいな仕打ちされていたら、あなたのオムツ、取り替えてなんてあげませんからね!」『東京発千夜一夜 上』「輪廻転生」森瑤子


    これは中年の妻が夫に言う台詞で「定年後にあなたの介護をするのは、会社ではなく妻であるこの私なんだから、もっと愛してちょうだい」という意味。夫はそんな妻にうんざりしている。
    だから、デデデ陛下の「おむつの取り替えは!?」というのは「この先老いたワシの介護は誰がしてくれるんぞい! 」という意味にもとれるな。
    もしかしたら、「老後の面倒を見る」の言い換えとして「おむつをかえる」という言い方が、一時期はやったのかもしれないが、そこまではわからない。
    『東京発千夜一夜』は1991年に朝日新聞に連載された。掲載紙の発行部数が多いので、読んだ人も多い小説だ。
    著者の森瑤子先生は1940年の生まれ。アニカビの72話の脚本を担当した野添梨麻さんは1962年生まれ。吉川監督は1947年生まれ。
    少なくとも2、30年前だと「老いた夫の介護を妻や嫁や娘がする」というのは、今よりも当然と考えられていた。一般論として「家族に見放される」=「老後に野垂れ死ぬ」みたいな考えは、世代が上になるほど強い。今は超高齢社会で妻子のいない老人も多すぎて、社会福祉でカバーする施策も進んでいる。しかし、予算が足りなくて高齢者の介護は、再び家族の手に戻されようとしている。
    「ワドルディ売ります」は家族を大切に、という話だったのだろう。

    今回とりあげた72話は、星のカービィ 20周年スペシャルコレクション - Wiiに収録されている。

    「私」というデデデ大王はいない

    公式の漫画、アニメ、小説のデデデ大王の語尾と一人称について、簡単に調べてみたデ。
    長期連載の一巻だとしゃべりが安定していないかと思い、途中の巻から抜き出したものもある。
    他にも漫画版のデデデはいるが、私が所有しているもののみ。後は任せた。

    一人称について

    今回は合計11名を調査したが、ワシ派とオレ様派がきれいにわかれた。

    ワシ 5名
    オレ様(表記ゆれふくむ) 4名
    わがはい 2名

    ゲーム版は、夢の泉の説明書が「ワシ」で、64時代の公式サイトでは「オレさま」で、バトルデラックスが「オレさま」となっている。64のサイトが最初に「オレさま」が使われた場面かはわからない。
    64当時のサイト↓
    https://www.nintendo.co.jp/n01/n64/software/nus_p_nk4j/gallery/gallery.html

    公式はバトルマンガっぽい「オレさま」に統一される流れなのかな~と思うが、ほぼ全部がギャグマンガだからか役割語としてのワシやわがはいも多い。外見だけだと、デデデ大王はかわいいペンギンなので「大人で大王」を強調するなら、ワシやわがはい。「関心を持たれたい」を強調するなら、「オレさま」なのかな。ワシというデデデ大王は、アニメのデデデ陛下が有名だが、公式のカービィ4コママンガにもその前からいたはず。


    語尾について

    小学館の大王様はそれぞれに特徴的な語尾やで。キャラを立たせてギャグを面白くするためだろう。角川は小説以外、標準語だ。小説の人物で語尾が特徴的だと「と、デデデ大王は言った」と書く手間が省けて便利だわい。

    「私はデデデ大王である」という大王様は調査範囲にいなかった。これはハル研究所の著作権管理部門(株式会社ワープスター)が、おっさんデデデを注文して回っているのか、小学館がそれをコロコロコミックにふさわしいキャラ立てとしているのか、わからない。小学生男子にとっては“パパ代理”なんじゃなかろうか。

    ともあれ、公式二次創作のデデデ大王の多くが、標準語を話さないというのは面白いことではある。

    以下実例。

    小学館

    『星のカービィ』さくま 良子 (1992年~)
    デデデ大王の一人称はオレ様。本人のしゃべりは標準語だが、お供のポピーが大阪弁。
    「こらーっ! オレ様のおやつまでとるなー! 」『星のカービィ 6』27Pより。



    『星のカービィ―デデデでプププなものがたり』ひかわ 博一(1994年~)
    一人称はおれさまで「~デ」という謎の語尾がつく。
    「おれさまの運動神経のよさを見せてやるデ! 」8巻74Pより。



    『星のカービィ! も〜れつプププアワー!』谷口あさみ(2006年~2016年)
    一人称はわがはい。あえてこれまでにない一人称を採用したのだろうか。大阪弁。
    「わがはいの願いは!! 星のカービィの連載の終了や!! そして、次回からは…、『銀河のデデデ大王! ~も~れつデデデアワー!!~』をスタートするんや!! 」5巻75Pより



    『星のカービィ パクッと大爆ショー!!』川上ゆーき(2012年~2015年)
    一人称はワシ。語尾に特徴は無く、標準語。
    「ワシにだきついたやつが、福-1グランプリの優勝者だ。」2巻61pより



    『星のカービィ 今日もまんまる日記! 』ダイナミック太郎(2016年~)
    一人称はワシ。「~じゃが。」などと、微妙に年配っぽいしゃべりなのじゃ。
    「その前にワシの部下を吐き出してはくれんかね。」1巻86Pより。



    『星のカービィ 〜まんぷくプププファンタジー〜』武内いぶき (2016年~)
    一人称はわがはい。「~じゃろ」などと、年配っぽいしゃべりじゃい。滑稽みを増すための言葉使いかな。「私達は遭難したんだ」より笑えるかも? 
    「わわわわ…、わがはいたちそうなんしたのじゃい!! 」1巻169P



    アニメ『星のカービィ』(2001年~2003年)
    一人称はワシZOY。語尾は「~ゾイ」ぞい。
    米国版では、声優さんは南部訛りでしゃべっているそうだ。
    「あれはワシがもらうゾイ! 」『星のカービィ (1)』 (小学館のテレビ絵本)3Pより





    KADOKAWA

    『星のカービィ カービィとデデデのプププ日記』まつやま登(2006年~)
    一人称はワシ。訛ってはいないが、いきおいよくしゃべることがおおいので「~っ」が多いっ。
    「ワシのラムネ玉コレクションがついに100個目だ! 」ベストセレクション83Pより



    『星のカービィ ぽよぽよな毎日』路みちる(2012年~)
    一人称はワシ。微妙に老人語っぽい語尾がまじるが、ほぼ標準語。
    「ワシはやきたてが食べたいんじゃ! 」73P



    『星のカービィ キラキラ★プププワールド』南条アキマサ(2014年~)
    一人称はおれさま。言葉使いは、少年マンガの主人公っぽく「~ぜ」とか「~ぞ」とか、王様にしては乱暴というか普通なんだ。
    「おれさまはデデデ大王! プププランドの大王さまだ! 」4Pより。



    小説『星のカービィ』シリーズ 高瀬美恵(2013年~)
    一人称はオレ様。語尾は「~わい」だわい。
    「フン! オレ様はカービィみたいなお人よしじゃないからな。きさまのいうことなんて、信じられんわい! 」大迷宮のトモダチを救え!の巻  16Pより。



    ここに掲載されていない、デデデ大王の一人称の情報お待ちしております。

    なぜアニメ版『星のカービィ』の作曲家は宮川彬良氏?

    アニメ版『星のカービィ』のOP曲の、『カービィ★マーチ』の作曲者は、宮川彬良氏。連続テレビ小説「ひよっこ」の音楽などを担当。ミュージカルや演劇の音楽も数多く手がける、ベテランの作曲家である。
    『星のカービィ』の総監督の吉川惣司氏は、子供向けのぬいぐるみ人形劇を上演する株式会社劇団飛行船で、脚本なども手がけたことがある。宮川彬良氏はミュージカルの作曲をしたり、ぬいぐるみ人形と共に、NHKの音楽教養番組『クインテット』に出演していたりしたので、活動が近いといえば近い。
    しかし、この人選は実は吉川惣司監督が宮川彬良氏に父親に挑戦する機会をあげたかったから、でもあるのではないか。
    宮川彬良氏はアニメの主題歌を作曲したのは、これが初めてのはずだ。
    宮川彬良氏の父親は『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌を作曲した宮川泰氏。
    別にアニメの主題歌ってマーチである必要はないと思うのだが、宮川彬良氏があえてマーチにしたのは、やはり偉大な父親に挑んでみたかったのではないだろうか。
    アニメ版『星のカービィ』はOPから「父親に挑戦する息子」の物語なのだ。
    もちろん動機などは推測でしかないが、『カービィ★マーチ』の作曲者は『宇宙戦艦ヤマト』の作曲者の息子、という一点は事実である。

    なお、『ららら♪クラシック』の2017年12月8日(金)の放送の回に、宮川彬良氏がゲストとして呼ばれている。この回の特集である「美しく青きドナウ」のシュトラウスの父親も音楽家で「ラデツキー行進曲」で知られる同じ名前のヨハン・シュトラウスだということで、よばれたらしい。
    http://www.nhk.or.jp/lalala/archive.html
    http://www.nhk.or.jp/lalala/backnumber.html

    カービィ★マーチは楽譜、歌入りCDともに、アニメ放映当時に出版されたものしかほぼ売られていない。それが普通と言えば、そうだろう。アニメの方もDVDが全話出ていなかったりする。




    『カービィ★マーチ』は、現在JASRAC管理曲。JASRACの許可を得れば、演奏できる。
    父親からの相続分もあったので、JASRACで権利者:宮川彬良で検索したら、大量の結果が表示されてしまった。
    http://www.jasrac.or.jp/

    《吹奏楽ヒット》宇宙戦艦ヤマト

    カービィ★マーチ

    星のカービィのディレクターの文章をアプリに性格分析させてみた

    現在の著作権法では、人工知能などが自動的に吐き出した文章には、著作権はない。
    なので、Personality Insightsに桜井政博氏と熊崎信也氏、二名のゲームクリエイターの文章を性格分析してもらった文章をそのまま掲載する。数値部分は省略した。
    ……すごいね、これ。そのうち簡単なレビューなら、AIが書くんじゃない?

    桜井政博氏のコラムの分析結果

    性格特性

    21811 分析された単語:
    確度が非常に高い解析結果

    結果

    情に厚いタイプであり、また多少気配りが苦手なタイプです.

    自分に自信があるタイプです: 始めたことを成し遂げる能力があると思っています. 権威に挑むタイプです: 権威や伝統を守るよりも、より良い方向へ変化させる方が良いと考えます. また、圧力を受けても冷静なタイプです: 冷静で、予期しない出来事にも効果的に対処します.

    洗練を意識して意思決定するタイプです.

    伝統にはあまりこだわりません: 人が通った道よりもわが道を行くことを大切にします. 自主性があなたの行動に大きな影響を与えています: 最高の成果が得られるよう、自分自身で目標を設定する傾向があります.


    他には知的好奇心がトップレベルで、理想が高く、変化を好むことが特徴らしい。

    分析した文章はこちら↓

    桜井政博のゲームについて思うことアーカイブ
    http://www.famitsu.com/guc/blog/sakurai/11375.html




    熊崎信也氏のウェブサイトの日記の分析結果

    性格特性

    8945 分析された単語:
    確度が非常に高い解析結果

    結果

    役立つタイプです.

    感情移入するタイプです: 他人がどう感じるかを意識し、同情するタイプです. 人を信じるタイプです: 何においても人を信じ、容易に信頼します. また、粘り強いタイプです: 困難な仕事に取り組み続けることができます.

    洗練を意識して意思決定するタイプです.

    方針を決める際に生活を楽しむことと自主性の両方を重要とみなします. 人生を最大限に楽しもうとしています. また最高の成果が得られるよう、自分自身で目標を設定する傾向があります.



    分析した文章はこちら↓

    One Line Diary
    http://kumayou.halfmoon.jp/diary/diaryroom.html


    分析の分析

    この性格はあくまでも「媒体にあわせた外面」である。
    桜井氏の文章はゲーム雑誌に連載されたコラムであり、単行本も出ている。おそらく桜井氏の文章は「若いゲーム好きの読者に、理想を掲げて挑戦するゲームクリエイターが、熱意を込めてまっすぐに主張する」という態度で書かれている。
    熊崎氏の文章は私的なものではあるが、多くの人に読まれていることを意識している。「人とよく関わり趣味を楽しみ、仕事も充実した日々を送る社会人の日記」というスタンスの文章なのだろう。

    性格分析に使用したウェブサイト

    Personality Insights
    「テキストから筆者の性格を推定してみましょう。Personality Insightsは、言語学的分析とパーソナリティ理論を応用し、テキストデータから、その筆者の特徴を推測します。 」
    https://personality-insights-livedemo.mybluemix.net/


    あとがき

    この文章は、同じアプリケーションで、以下のように性格分析される人物によって書かれた。

    鋭敏なタイプであり、物事に懐疑的なタイプであり、また鵜呑みにしない人と思われるかもしれないタイプです.

    自主性の高いタイプです: 自分の時間を大切にしたいという強い願望があります. 芸術への理解があるタイプです: 美を楽しみ、創造的な経験を追求します. また、創意に富んでいるタイプです: 想像力豊かです.


    @hosiniiruのTwitter分析より
    https://personality-insights-livedemo.mybluemix.net/?source=myself

    カービィ世界の本体はゲームか? KADOKAWAと組んでのマルチメディア展開は続く

    カービィの世界観を決める権限は、端的に言ってゲーム開発部とブランドマネジメント課の両方にある。このうちの後者に焦点をあてた考察。

    1 ハル研究所が広げるカービィ世界

    ここ数年のカービィのグッズにはカービィカフェやプププトレインなど、独自の物語性を付与されたものが多い。
    また、カービィ関連の書籍で、KADOKAWAから出版されるものが多くなっている。
    最近の『星のカービィシリーズ』は大塚英志氏の言う従来型のメディアミックスから、角川歴彦型メディアミックスへの移行期なのではないだろうか、と考察した。
    kadokawa_a-thumb-350x433-7846.png
    上記の図は、大塚英志緊急寄稿「企業に管理される快適なポストモダンのためのエッセイ」より引用。大きな画像はこちら  

    こういったヒエラルキーにはある程度、法的根拠がある。カービィのゲームを著作物として利用する時には、ハル研究所と任天堂の許可を得ないといけないが、アニメの映像を利用する際はそれにくわえて、CBCの許可を得ないといけないはずだ。キャンディキャンディ裁判は「小説として発表されていない原作が、一次的著作物かどうか」が争点のひとつであり、漫画家といえど、原作者の許可を得ずに作品をグッズにしてはいけないという判決が出た。著作物をグッズにするのは、通常著作物を複製する行為とされていて、独自の著作権は発生しない。

    カービィの従来のメディア展開を、一次的著作物と許可を得た二次的著作物の関係で説明する図1著作権2
    マンガ版のグッズというのも多少あったらしいが、この図では省略させてもらった。
    法的にはこうわけられる

    (c)表記がNintendo/HALのみのものは一次的著作物
    (c)表記にNintendo/HAL以外の著作権者が記載されているものは二次的著作物

    一次的著作物とはハル研究所が自ら作ったカービィ作品である。
    例えば、カービィカフェの音楽CDは表記を見るに一次的著作物だ。カービィカフェグッズもプププトレイングッズも一次的著作物(の複製)といえるだろう。
    ゲームを原作と考えてハル研究所が自ら作ったグッズや他のメディア作品を下に置くのには、法的根拠はない。
    同じくハル研究所が作った作品であり、商品なのだ。またそれらは広告も兼ねる。メジャーなお店でグッズが売っているということそのものが、ゲームの宣伝になる。商品の新発売やコンサートなどのイベントのたびにカービィがインスタ映えしたり、TwitterでRTやいいねされたりするのも、知名度やブランド力に貢献する。

    なお、グッズにはゲームや出版物と違い公式のアンケート窓口がなく、基本的に売り上げでしかニーズを判断できない。ショップで敵キャラグランプリなるアンケートが、行われた理由のひとつはそれではないだろうか。


    2 株式会社ワープスターが外部とひろげるカービィ世界

    まず、ハル研とワープスターに所属する藤江宏志さんのインタビューを引用しよう。

    __ ゲームの新作のタイミング以外にも、定期的に盛り上げていくわけですね。
    藤江 それと最近は、お店でのフェアなどにあわせて新しい側面を表現していったり、メーカーさんから「こういう新しいカービィを表現したい」というご提案をいただく機会も増えてきまして。それに対して私たちも協議しながら、新しいカービィの世界観とアートワークを協議しながら作っていくパターンも出てきました。
    Nintendo DREAM(ニンテンドー ドリーム) 2016年 12 月号



    株式会社ワープスターは『星のカービィシリーズ』の知的財産を管理している、ハル研究所と任天堂の関連会社である。アニメやマンガや小説などの公式二次創作やグッズ類を、カービィの世界観に合わせる役目はここが担う。
    元々は2001年にテレビアニメ『星のカービィ』を制作する際に設立された。ハル研の公式二次創作世界の拡大は、アニメ放映開始時期に基礎が作られたといえる。上記の記事では藤江氏について、こう記されている。

    ハル研究所入社時に始まったアニメ「星のカービィ」を担当し、ワープスターと兼任して監修を務めた。以降、グッズなどゲーム以外のカービィの監修やブランド管理に携わる。

     

    桜井政博氏去りし後、他のゲームディレクターのつくるゲームはある意味、「二次創作」である。これは『星のカービィ2』下村ディレクターの頃からあった構図ではある。下村ディレクターが辞め、熊崎ディレクターが『カービィwii』をつくるまでの時期は、ハル研内部でカービィの新作をつくるというのに試行錯誤していた時期だった。
    ブランド管理部門(ワープスター)が社外と協力して、カービィの新作ゲームを作ろうと試行錯誤していた時期でもあった。
    この時期につくられた『毛糸のカービィ』は著作権表示が珍しくハルと任天堂のみではない。こうだ。

    (c)2010 Nintendo /Good-Feel
    (c)2010 HAL Laboratory,Inc. /Nintendo

    著作権表示からするに、このゲームはグッドフィールが作った、カービィの公式二次創作ゲームなのかもしれない。
    カービィの世界観を決める本体はゲーム開発部門ではなく、ブランド管理部門の可能性すらある。少なくとも『毛糸のカービィ』の時のように、外部のクリエイターに「カービィとは何か」を説明する仕事をするのは、そちらだ。なお『あつめて!カービィ』の著作権表示は(c)HAL Laboratory, Inc./Nintendoなのだが、エスカルゴンの著作権は誰のものなのか、疑問がわいた。ゲームでアニメオリジナルキャラクターを使用する際にCBCの許可がいらない契約なのだろうか。
    ちなみにドロッチェ団は(C)2006 HAL Laboratory, Inc. / Nintendoである。



    アニメ版に近いこのデデデ大王ぬいぐるみのタグには、(c)CBC(中部日本放送株式会社)とは書いていない。しかもAmazonの情報を信じるなら2003年のアニメ放映終了後6年たった2009年にこれが作られている。ハル研究所(ワープスター)的にこれは二次ではなく“桜井氏監修のデデデ”(一次)なのだろう。個人的にアニメ版としか思えないデザインのデデデ大王のキーチェーンも持っているのだが、著作権表示は、以下のようになっている。

    (c)Nintendo/HAL
    T-ARTS


    T-ARTSはタカラトミーアーツ。
    また、スイーツパーティの著作権表示はこうだ。

    (c)Nintendo/HAL Laboratory,Inc.
    Original Game: (c)HALL Laboratory,Inc.


    グッズは新作ゲームの絵を忠実に追ってはいない。例えば、カービィカフェのデデデの顔は、『星のカービィ トリプルデラックス』のデデデの顔ではない。
    グッズや小説やマンガは桜井政博氏の作り出したものを基本にすることで、軸がぶれないようにしている印象だ。その方が熊崎ディレクターなどが新作ゲームをつくる度に、ゲームキャラのデザインを気軽に変更できていいのではないか。
    しかし、ロボボプラネットなどゲームが新発売された場合は、宣伝をかねて小説やマンガが話をあわせたりもする。



    3 KADOKAWAが広げる世界

    現在のハル研の活動を見るに、カドカワ的な「世界観」を本体とするビジネスに移行する過程であるように思う。

    kadokawa_b-thumb-350x495-7848.png
    上記の図は再度、大塚英志緊急寄稿「企業に管理される快適なポストモダンのためのエッセイ」より引用。大きな画像はこちら

    ここでKADOKAWA(角川)が、どれほどの巨大企業か少しだけ説明しよう。
    まずは現在ファミ通はKADOKAWA傘下である。メディアワークスもだ。
    つまりファミ通(アスキー)の攻略本や、桜井政博氏の著書もKADOKAWAからの出版となる。20周年記念本の『星のカービィ プププ大全』は、長年カービィマンガをコロコロコミックなどで連載してきた小学館から出たけど、25周年記念本らしき『星のカービィ アート&スタイル コレクション 』はKADOKAWAから出る。
    ニコニコ動画もカドカワであり、カービィオーケストラコンサートがニコ動で有料公開されたのも、カドカワとのつながりの強さを語っているのかもしれない。
    図版(広告)ベタ貼りになってしまうが、KADOKAWAのカービィ関連商品(の一部)をご覧いただこう。


         

    KADOKAWAは、低年齢向けのカービィ小説やカービィマンガに力を入れていこうとしているようだ。

    2著作権2

    時間と共に外部のクリエイターの影響を取り込み、拡大していくカービィ世界。
    正確にはさくま良子版以降常になんらかのマンガは連載されているし、なんらかのグッズも発売されている。
    『星のカービィ』のマンガはコロコロコミックに連載された分を全部合わせると1000万部になるというから、二次的著作物といえど長期にわたり、大量の読者を持っていることがわかる。

    情報の流れには双方向性があり、マンガはアニメに影響を与え、アニメはマンガやゲームや小説に影響を与えている。上記の藤江氏らハル研の「カービィとは何か」を外部に伝える立場の人達が、漫画家さんやアニメスタッフメーカーさんと共同でものづくりしているときに、頭の中に公式二次創作の内容が入るのだろう。
    また、ハル研究所が積極的にカービィ公式二次創作に横のつながりを作っているのではなかろうか。おそらくハル研究所(ワープスター)が自らアニメスタッフに「このヒットしたマンガを参考にしてください」とさくま版やひかわ版のマンガを資料として渡したり、小説等の関係者には「このヒットしたアニメを参考にして下さい」とアニメカービィ関係の資料を渡したりしているのだろう。

    初代『星のカービィ』の時にはカービィの世界観は、桜井氏個人のものだったと考えていいだろう。ただし、その時点でも著作権は会社にある。『星のカービィ 夢の泉の物語』の時にはどうだったかわからないが、もう“カービィ世界”は会社の財産として『カービィのピンボール』などの開発も進んでいたのではないか。

    ここでゲームの続編のディレクターは必ずしも、初代のディレクターではないという例として、『バイオハザード』シリーズのディレクターを見てみよう。

    『バイオハザード』ディレクター:三上真司氏
    『バイオハザード2』ディレクター:神谷英樹氏
    『バイオハザード3 LAST ESCAPE』ディレクター:青山和弘氏
    『バイオハザード CODE:Veronica』ディレクター:加藤弘喜氏
    『バイオハザード0』ディレクター:三上真司氏
    『バイオハザード4』ディレクター:三上真司氏
    『バイオハザード5』ディレクター:安保 康弘氏
    『バイオハザード6』ディレクター:佐々木栄一郎氏
    『バイオハザード7 レジデント イービル』ディレクター:中西晃史氏

    なお、同じくカプコンの『逆転裁判』シリーズは巧舟氏がほぼ全てにディレクターとしてかかわっている。
    25周年になる星のカービィは、初代以外のディレクターもがんばっているシリーズといえる。


    4 今後のカービィ世界はどうなるのか

    簡単に言って、公式のカービィ世界は多様化し拡大し続ける。今はそれが加速している時期だろう。
    単純化すれば以下の四つの流れがある。

    1. ハル研社内でゲームが、作られ続けることによる拡大。
    2. ハル研社外で関連ゲームが、作られ続けることによる拡大。(例:大乱闘スマッシュブラザーズ)
    3. ハル研が社外と協力して、ゲーム以外の一次的著作物である様々な関連商品を生み出していくことによる拡大。(例:カービィオーケストラコンサート)
    4. KADOKAWAなどノウハウを持つ社外が、積極的に二次的著作物である関連商品を生み出していくことによる拡大。(例:つばさ文庫のカービィ小説)

    ハル研内でつくられるゲームが、ハル研製のゲームのみの血を受け継いだ“純血種”であることを期待したい人もいるだろうが、ゲームスタッフも入れ替わるし現実的ではない。そろそろマンガ版カービィを読み、アニメ版を見ていた世代が入社する、した時期なのではないだろうか。

    今後カービィ世界はより多くの人に愛され、カービィとは何か、みたいな問いに答えることはどんどん困難になるだろう。



    参考
    大塚英志緊急寄稿「企業に管理される快適なポストモダンのためのエッセイ」
    http://sai-zen-sen.jp/editors/blog/sekaizatsuwa/otsuka-%20essay.html

    社長が訊く『毛糸のカービィ』
    https://www.nintendo.co.jp/wii/interview/rk5j/vol1/index.html

    祝『星のカービィ』新シリーズ1巻発売! なんとひかわ先生から直筆コメントが!!!!
    https://corocoro-news.jp/comic/1437

    関連商品一覧|カービィWiki
    http://ja.kirby.wikia.com/wiki/%E9%96%A2%E9%80%A3%E5%95%86%E5%93%81%E4%B8%80%E8%A6%A7


    ※個人的お願いですが、カービィwikiなどにゲーム情報やグッズ情報を掲載される方は、著作権表記についても記して下さると参考になります。

    ※広告べたべただけど、お小遣い稼ぎ? と思う人もいるかもしれないので解説。広告は著作権法で例外とされているので、公式画像を合法的に使用できるのです。この記事は一応「著作権ビジネス」の話をしているので公式画像の無断転載とかしたら、一気に説得力が落ちる気がします。引用として許される条件はかなりシビア。まあ買ってくれれば嬉しいですが。