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    アニメ『星のカービィ』のデデデのトラウマについての考察 (前編)

    ニメ『星のカービィ』第83話「魔獣教師3」で、言及されるデデデのトラウマについて。

    本編考察が短編小説並みの長文かつ引用文の多くが専門的なので、短文バージョン(わかりやすいあらすじ)を冒頭に置いておきます。短い方は大雑把な文章なので、気が向いたら、本編どうぞ。

    短文版


    「うーん、この辺の脳みそが問題だな。デデデくんは幼い時のトラウマで注意力が散漫になったんだ」アニメ「星のカービィ」第83話 魔獣教師3より。
    ここで想定されている病名はおそらくPTSD(心的外傷後ストレス障害)。
    これはトラウマを受けた後に発症する。
    幼児期に虐待を受けたPTSD患者の脳の海馬は萎縮する。これはMRIで確認できる。この場面でチップ先生がデデデ大王の頭部のMRI写真らしきものを持っているのだが、指さしている所はちょうど海馬のある所だ。
    吉川監督がどこまで想定していたかはわからない。
    だが、アニメ版のデデデ大王は結果として、見事にPTSD患者の特徴を備えている。それはいらただしさと、激しい怒りにまかせての暴言や暴力。無謀さ。心細さと怯え。集中困難。そしてPTSDに解離症状を併発すれば、弱いものがいじめられる空想をしがちで、記憶力に問題があり、催眠にかかりやすく、とりつかれやすい人物となる。
    ネットでは「デデデはトラウマにより知能の発達が止まったらしい」と書かれていたりするが、チップ先生は「注意力が散漫になった」としか言っていない。知能うんぬんは不正確な記述である。


    以下本編
    このブログの1ページの文字数の上限を超えたので、二つにわけました。

    アニメ版デデデの病名は?



    アニメ「星のカービィ」第83話 「魔獣教師3」には、デデデについてチップ先生がこう分析する台詞がある。

    「うーん、この辺の脳みそが問題だな。デデデくんは幼い時のトラウマで注意力が散漫になったんだ」

    ここではどういうつもりでトラウマという言葉を使ってるんだろう。
    日常的には「ちょっと嫌な記憶」という意味でも、トラウマは使われる。
    しかしこれがカワサキあたりが「陛下は学校に、何かトラウマでもあるんじゃないの~」と言ったのならともかく、チップ先生がMRI写真とおぼしきものを見ながらではガチすぎる。
    ちなみにMRIはかなり高価で巨大な機器なのだが、ヤブイの診療所にあるのだろうか。しかしそれは小さなことだ。

    チップ先生の言葉をそのまま受け取れば、想定される病名はPTSD(Post Traumatic Stress Disorder:ポスト トラウマティック ストレス ディスオーダー :心的外傷後ストレス障害)だ。心的外傷はトラウマの日本語訳。

    ちなみに「魔獣教師3」を見て「ああ、PTSDか」と言った人は少なくとも2007年にはいたらしいので、わかるひとにはわかる表現だろう。
    某掲示板の過去ログ

    PTSDは簡単にいうと、心に傷を受けた後の病である。重症患者の場合は、脳にもその跡が残ることがある。

    PTSDにおいては,MRIを用いた体積計測研究で海馬に萎縮がみられることが指摘されている。
    (中略) Bremnerら(1997年)は幼児期に虐待を受けた17人のPTSD患者で左海馬の12.5%の体積減少を示した。さらにSteinら(1997年)の研究は幼少時に性的虐待を受けた21人のPTSD患者において左海馬の体積の5%減少を示し,左海馬の体積と解離症状の重症度との間に相関を認めた。

    解離性障害 (新現代精神医学文庫)

    ということで、医学的に考えればチップ先生のいう「この辺」は海馬のことじゃないだろうか。海馬は脳の真ん中のやや下寄りにある。
    たまたまかもしれないが、チップ先生は脳の真ん中とおぼしき所を指していて、あの絵柄なら、海馬はそこって言っていい。

    海馬は脳の記憶や空間学習能力に関わる脳の器官だ。チップ先生はデデデのその部分が平均より小さいっていいたいんだろう。ププビレッジにデデデの他に同じ種族がいないから、平均も正常の基準も何もないような気がするが、チップ先生は、デデデの同種族がぞろぞろいる国にもいたことがあるのかもしれない。

    PTSDの症状をDSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル から一部引用する。
    E.心的外傷的出来事と関連した,覚醒度と反応性の著しい変化,心的外傷的出来事の後に発現または悪化し,以下の2つ(またはそれ以上)によって示される.
    (1) 人や物に対する言語的または肉体的な攻撃性で通常示される,(ほとんど挑発なしでの)いらただしさと激しい怒り
    (2) 無謀なまたは自己破壊的な行動
    (3) 過度の警戒心
    (4) 過剰な驚愕反応
    (5) 集中困難
    (6) 睡眠障害(例:入眠や睡眠維持の困難,または浅い眠り)

    チップ先生が言っているのは、この (5) のことだろう。
    他もアニメ版のデデデに、いくらか当てはまるような気もしなくもない。
    (1)はデデデが何かというとエスカルゴンを叩いている場面を、思い浮かべてみればいいね。
    (2)とか、デデデの無謀さが「作劇上の都合」でなく、トラウマを負った者の悲劇なのだと思えてくるよ。
    (4)は、ちょっとしたことですごくびっくりするってことだから、吉川監督の脚本担当回なら、メーベルの大予言(前編)でワドルドゥ隊長に飛びつくデデデとかはそんな感じ。
    (3)と(6)は回によるかな。革命を恐れたり、メーベルの大予言(前編)で悪夢を見たりね。どっちも吉川監督の回にあった表現ではある。
    似たような結果をもたらすだろうが「短気で無謀で臆病で集中力がない」というのは、「知能が低い」ではない。

    また「デデデには生まれながらに集中力がない」は、発達障害のADHDを疑うケース。
    「デデデには幼い頃のトラウマのせいで集中力がない」が、PTSDだ。。

    心的外傷となるような,またはストレスの強い出来事への曝露の後に続く心理的苦痛はきわめて多様である.ある症例では,不安または恐怖に基づく文脈の中でよく理解することができる.しかしながら,心的外傷的となるような,またはストレスの強い出来事に曝露された多くの人々は,不安または恐怖に基づく症状というよりむしろ,最も顕著な臨床的特徴が快感消失や不機嫌症状,外に表出される怒りと攻撃的症状,または解離症状である表現型を示す。
    DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル  P263

    もう少し具体的な話が聞きたい人もいるだろうから『DSM‐IV‐TRケースブック』P319から「狙撃者」という急性の外傷後ストレス障害(PTSD)子どもの症例を引用しよう。これは宅間守の起こした附属池田小事件に似た、事件に遭遇した子供の話だ。
    7歳になるリーは、涙もろく、いらいらし、授業中の集中困難という理由で、担任教師によって診察に紹介されてきた。2カ月半前にリーは校庭で、狙撃者の銃撃によって次々と撃ち殺された子供達の中にいた。15分の間に、狙撃者は1人の子供を撃ち殺し、数人を負傷させた。(中略)事件後2~3日以内に、彼女の行動に顕著な変化がみられた。彼女は友人を避けるようになった。他の子供達が話しかけると口喧嘩をするようになった。学校の勉強に興味がなくなり、注意を与えないと課題をやり通すことができなくなった。(中略)家では気分のむらが多くなり、いらいらし、食ってかかり、恐れ、または人にしがみつくようになった。新しい状況に対してはびくびくし、一人になるのを怖がり、トイレに誰か付いてくるように言い張った。リーは、いつも両親に一緒に寝てくれるよう頼んだ。睡眠中も落ち着かず、時折叫び声を上げた。(中略)後になって、授業中に教室で何が話されたのか思い出せないことがあった。
    アニメ版デデデは、少なくとも「魔獣教師3」のデデデは、こういう子供が心の傷が残ったまま大人になった姿なんじゃなかろうか。


    もし、この文章がこのブログおよびサイト水晶宮で初めて読む文章なら、上記の『DSM-5』からの引用文最後の「解離症状」がピンと来る人は少ないだろう。
    ざっくりいおう。「憑依」は、精神医学の世界では「解離」という言葉になる。詳しくは後述。

    先の「狙撃者」の症例にもあるが、トラウマを負った人が「おぼえているはずのことをおぼえていない」のはよくあることだ。
    「陛下は自分に都合の悪いことは忘れる 優れた才能をお持ちなんでげす」
    第41話 メーベルの大予言! (前編) 脚本 吉川惣司より。
    普通、「嫌なことは忘れましょう」という場合は、「考えないようにしましょう」とか「関心を向けないようにしましょう」という意味だが、世の中には文字通り忘れる病がある。
    解離性障害のひとつの典型が「ここはどこ、わたしは誰?」の解離性健忘である。
    もしかして、アニメシリーズの話数が進むほどに、デデデの言動がどんどん脳天気な方に進んでいくのは、毎週ひどい目にあいすぎて、辛い現実から目を背け、嫌な出来事を即座に忘れる方向に、解離が重症化していっているからとかいうんじゃなかろうな。
    救いはないが、筋は通る。

    解離は正常な記憶力を失う代わりに、時に病的な想像力をもたらす。
    あるときは「あたしは17歳の少女よ」といい、またあるときは「私は50代の学者だ」と20代の青年でありながら、本気で主張する解離性同一性障害(多重人格)は、病める人間の想像力の究極の世界である。多重人格という程でもないが、一時的に人格が交代するような憑依現象も精神医学の世界では解離に含む。
    解離性障害の経過は一般に慢性であり、一度憑依現象を起こした人間は何度も起こすのが普通だ。ただし、年齢の経過とともに改善することもある。

    「魔獣教師 3」などの「理解力に比して、暗記科目の成績が不釣り合いに悪い」「間が抜けているが、人をだます才能があり、趣味は弱い者いじめのための悪巧みと悪趣味な番組作り」というデデデの人物像は、「記憶力がなくて、想像力がある」ってことだよね。デデデの場合はさらに実行力まで伴うが。
    解離の「病的な想像力」は「度を超えて豊か」「目の前の現実無視」というだけでなく「残酷」という点も特徴なのだ。

    解離のある人は、弱いものが強いものにいじめられたり、踏みにじられたりする空想を抱きがちなところもあります。

    解離性障害のことがよくわかる本 影の気配におびえる病 (健康ライブラリーイラスト版) 柴山雅俊
    自分が弱者であると痛感するような辛い体験による、現実逃避が健忘と想像力の背景にあるのだから当然と言えば当然だろうか。
    ちなみに上記の本の表紙はこれね。


    この表紙の絵を見て、『星のカービィ トリプルデラックス 』のデデデが主人公のモードに出てくる、ブラックデデデを思い出した人は、おそらく正しいだろう。
    ゲーム『星のカービィ 鏡の大迷宮 』の発売は2004年なので、2003年で終了したアニメにはシャドウは出てこない。あれについてダークとかブラックとか色々あるけど、心理学的にはゲームのペルソナシリーズと同じく影(シャドウ)と呼ぶのが正しい。

    デデデの過去とは?


    PTSDは定義上、すごい過去を要求する病名である。
    デデデはPTSDと断言されていないから、多少診断基準と外れてもいいだろう(その場合は、外傷後症状を持つ、などという)。だけど、MRI写真?で見てわかる水準なら、相当ひどい目にあってるよな。
    DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアルよりPTSDの基準を引用。
    A.実際にまたは危うく死ぬ,または重症を負う,性的暴力を受ける出来事への,以下のいずれか1つ(またはそれ以上)の形による曝露心的外傷的出来事を直接体験する.
    他人に起こった出来事を直に目撃する.
    (中略)

    基準Aにおける直接体験される心的外傷的出来事には,(これらに限定されてはいないが)兵士または民間人としての参戦,実際の身体的暴行またはその脅威(例:身体への攻撃,強盗,ひったりくり,幼児期の身体的な虐待),実際の性的暴力またはその脅威(例:無理強いされた性交,アルコールや薬物で興奮を高めた性交,虐待的な性的接触,身体接触を伴わない性的虐待,性的目的の人身売買),誘拐,人質,テロ攻撃,拷問,戦争の捕虜としての監禁,天災または人為災害,重大な自動車事故が含まれる.
    さて、何があったのやら。
    気になるが、アニメのデデデに関してはほとんどヒントがない。
    これがオリジナルアニメだったら、「そうか、国王という地位にありながら、中年の現在独身なのは、ひどい家庭に育ったからか」とかいっちゃうところだ。容姿が悪かろうが、頭が悪かろうが、性格が悪かろうが、その全てであろうが、国王だったら結婚はできると歴史が証明している。というか、結婚は国王の義務だろう。
    でも、この点は原作のゲームで独身なんだから、仕方がないよね。
    デデデとエスカルゴンの関係から考えるに、「デデデの父親が家族に暴力をふるうような人物だった」が、一番証拠に困らないPTSDの原因かな。

    幼少時のデデデは親からハンマーで叩かれても、うつろな目で耐えているような子だったとかいうならまさにPTSD患者だろう。
    でもその手の過去があるとしたら、どうして現在のように、よく笑うようになったのかって疑問がわくよね。都合の悪いことはみんな忘れたとか? もっとも初期のアニメ版デデデの笑いは主に邪悪な笑みだから、矛盾はないのかもしれない。

    ところで、アニメ版デデデの幼少期ってどんなんだろ。スーパーデラックス版デデデみたいな、くりくりおめめの二頭身でも想像すればいいのだろうか。

    この「魔獣教師 3」の脚本は、おそらく現代日本の問題を念頭に書かれている。
    つまりこれは「辛い体験があるために成績が悪く、劣等感を抱いている被虐待児が同級生に馬鹿にされて、暴言を吐き、暴力行為に及び、授業を妨害し、最終的に教師を退職に追い込む。そして、被虐待児本人も嫌な記憶を増やしただけ」という話なんじゃないだろうか。デデデのトラウマの話がこれ以降出てこないのも、この話用の使い捨て設定のつもりなのかもしれない。
    現代日本の寓話的表現なら、デデデの過去として想定されているのは、家庭の問題であろう。しかしアニメ版「星のカービィ」は宇宙の覇権を賭けたバトルアニメなので、もしデデデの過去が描かれることがあったら、「戦災孤児」とかの方向だったかも。
    個人的には、家庭の問題ならあんのうん脚本で、戦災孤児なら吉川脚本で見てみたかったな。

    怒りをコントロールできない子の理解と援助―教師と親のかかわり 大河原美以2004年 には、家庭に問題があり、解離が強く、怒りで暴力をふるう子供が数多く登場する。この本は「魔獣教師 3」のようなバッドエンドを、阻止するための本である。以下に配慮が必要な子を特別扱いすることで、他の子が不満を持つことへの対処法の部分を引用する。
    大河原 「あぁ、そう思ってくると、「ひいき」っていう意味が、今まったくひっくり返りましたよね。つまり、子どもたちが「ひいき! ひいき!」と訴えるときというのは、「ひいきはいけない、平等じゃなきゃいけない」っていう前提で訴えているわけですが、先生がその前提自体をひっくり返しちゃうってことですね。配慮が必要な子がいっぱいいる時代の中でやっていくためには、そうじゃないと、やっていけなくなるわけですね。いろんなところで。「みんなひいき」っていうのが堂々とまかり通ると、逆にやりやすくなる。」
    浦野 「(中略)いろんなひいきをしていくこともあるよっていうことは、はじめにやっぱり伝えておきます。」
    大河原 「なるほどね。そうすると、子どもたちの、「ひいき! ひいき!」に怯える必要はないわけですね。一人一人が大事だからと伝えておけば、子どもたちはそういう武器を使ってこなくなるのね」


    続きはこちら
    アニメ『星のカービィ』のデデデのトラウマについての考察(後編)
    http://powderblue484.blog40.fc2.com/blog-entry-35.html
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    タグ : アニカビ

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