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    『ゲゲゲの鬼太郎』のバックベアードの正体は閃輝暗点

    バックベアードという妖怪は、水木しげる先生のオリジナル妖怪だという。
    おそらく水木しげる先生は、バックベアードを実際に見たのだ。

    片頭痛の直前に見える幻視を、閃輝暗点という。
    閃輝暗点で検索すると、バックベアードに似た画像がいくつか見つかる。
    実際に見た人の話はこうだ。

    17歳の娘のことなのですが、時々、ぴかぴかした光が見えてギザギザのようにだんだん広がって見えるといいます。視界が暗くなって見えにくくなるようなのですが、中に人の顔のようなものが見えることがあるそうです。


    閃輝(性)暗点 とつか眼科
    中心が暗くて人の顔のようなものが見え、ふちが稲妻のようにギザギザして、歯車のように回転しながら視界をふさぐ、閃輝暗点はバックベアードそのものではないだろうか。ちなみに、アニメ五期のバックベアードは紫電と空間の歪みをともなって現れる。

    参考 突然、視野が欠けギラギラ光るものが見えた

    それでは水木しげる先生自身のバックベアードに、関する文章を引用しよう。

    この目でにらまれると、にらまれたものはとたんにめまいを感じ、ビルなどにいればたちまち落ちてしまうという。


    妖怪世界編入門 1978年 水木しげる

    この水木しげる先生の文章は「閃輝暗点を伴うめまい」という、病院ではよく聞く訴えではなかろうか。
    「めまい」は片頭痛と関連性が高い。

    めまい患者さんの約40%に片頭痛があるとされています。逆に片頭痛を有する人の約20%にめまいがあるとも言われています。

    めまいと頭痛|医療法人 入野医院

    芥川龍之介の『歯車』での、閃輝暗点とされる描写はこうだ。

    僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?――と云うのは絶えずまわっている半透明の歯車だった。僕はこう云う経験を前にも何度か持ち合せていた。歯車は次第に数を殖やし、半ば僕の視野を塞ふさいでしまう、が、それも長いことではない、暫らくの後には消え失せる代りに今度は頭痛を感じはじめる、――それはいつも同じことだった。


    歯車 青空文庫

    水木しげる先生は読書家だったので、本人が頭痛の時に閃輝暗点を見たのではなく、本や他人の体験談から着想した可能性もある。
    絵においては、内藤正敏氏の写真や、ルドンの絵画の影響であるとする説がある。
    鬼太郎最強のライバル「バックベアード」の由来と成立を考える
    たしかにこれらと似ている。
    しかし、内藤正敏氏の写真には「めまい」に関する文章は、ついていたのだろうか?
    元とされる「少年ブック 昭和40年8月号」や「少年ブック1967年8月号付録」の文章にも、「めまい」の文字はない。前者に「しらずにガケからおちたり、めくらになる」という文章はある。だが、ガケから落ちる理由は定かではない。目が見えなくなることと関連して、「目の前が暗くなったから」かもしれないし、逆に「まぶしく感じた」からかもしれない。憑依体験かもしれない。
    また、にらまれた者を死に至らしめる、邪視という概念自体は古くからある。

    水木しげる先生の「妖怪大戦争」(1966年5月)でも、めまいの描写はある。
    バックベアードの目を見た鬼太郎は「くらくらくらくら」という擬音とともに倒れ、夢遊状態でバックベアードに操られ、そのバックベアードの死とともに正常な状態に戻る。

    これは神経調節性失神(脳貧血)といわれる、めまいがした後での気絶らしくもある。だがその後夢遊病(睡眠時遊行症)に移行しているので、心因性の失神から催眠により解離したのだろう。古い言葉ではヒステリーとなるか。

    「妖怪ラリー」(1968年9月)でも、バックベアードは魔女や鬼太郎をにらみつけて、めまいをおこさせている。この時は気絶も夢遊病も伴わない。

    かように水木しげる先生は、バックベアードと「めまい」を結びつけている。
    だから、私は「バックベアードは、ある程度水木しげる先生の実体験に基づく」と考える。
    片頭痛の原因ははっきりしないそうなので、人がなぜ閃輝暗点を幻視するのかはわからない。
    バックベアードが有名な妖怪になった理由のひとつには、似たようなものを見たことがある人が少なくないということがあるんじゃなかろうか。それこそルドンも見たのかもしれない。

    閃輝暗点は古くから人々の目の前に現れていた。
    現代になってそれは、都会に立ち並ぶビルの上に現れるようになったのだ。
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