『星のカービィ』の野添脚本回の過去作との照らし合わせ

    wikipedeiaに項がなかったので、アニメ『星のカービィ』の野添さんの脚本の簡単な考察の前に、プロフィールをまとめる。


    野添梨麻 のぞえ・りま

    1962年(昭和37年)大阪市天王寺区生まれ。
    甲南女子大学短期大学部英語学科卒。在阪出版社に勤め数々の作品に携わってのち、フリーライターに。(中略)現在はシナリオライターとして「コミック劇画村塾」(スタジオシップ)誌上に「のんすとっぷAD」を連載する傍ら「歴史と旅」などに随想等を発表。




    以上、『阪急線歴史散歩』より引用。この本の出版は、昭和62年4月15日で、野添さんが25歳頃の本。

    引用文中に、「コミック劇画村塾」とあり、実際に劇画村塾のサイトに卒塾生として名前があったが、現在確認できない。

    著作リスト(部分)-リンクはアマゾンに跳びます。

    日本女性史辞典(共著・三省堂)
    おもしろサンデー(共著・NGS)1983/12
    ニュータレント教育(共著・NGS)
    阪急線歴史散歩 (史跡をたずねて各駅停車) 単行本 – 1987/4
    神戸 女ひとり旅 (女ひとり旅シリーズ) 単行本 – 1990/10
    ウルトラマンキッズ母をたずねて3000万光年―アニメ絵本 (2) 大型本 – 1992/6
    ミラーマン―鏡の黙示録 (スーパークエスト文庫) 文庫 – 1994/9
    円谷英二―ウルトラマンをつくった映画監督 (小学館版学習まんが人物館)-1996/9


    ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年 1991年~1992年(シリーズ構成)
    仮面天使ロゼッタ 1998年(脚本)
    仮面天使ロゼッタ 漆黒のフレイア 1999年(脚本)
    星のカービィ 2001年~2003年(脚本)
    オタスケガール 2003年(脚本)
    超星神グランセイザー 2003年~2004年(脚本)


    上記の著者略歴にある「日本女性史辞典」と「ニュータレント教育」をアマゾンと紀伊國屋書店で検索してみたが、本を特定できなかった。
    このリストから、円谷関係の仕事が多い人であることがわかる。
    アニメの脚本家として活動したのは、2001年から、2004年あたり。
    公式のツイッターが存在し、そこではプロフィールに星のカービィ 仮面天使ロゼッタ 超星神グランセイザーなど脚本を書いています、と書かれている。

    以下、ブックレビュー。


    阪急線歴史散歩(史跡をたずねて各駅停車)

    阪急線の駅のひとつひとつで降りて、日本書紀など古典からの引用も交え、その土地の史跡などを紹介する本。白黒で小さいながら、写真も添えられている。
    一駅あたりに割かれているページ数は4ページほどだが、嵐山駅などは8ページである。
    内容は創立者小林十三と絡めた阪急線自体の歴史や、地域の歴史、沿線の寺社仏閣や古墳や墓所や城跡などの史跡などの紹介、博物館や美術館や資料館の案内が主である。
    文体は「ですます」調でやわらかいが、地元の人だけが知るような固有名詞や歴史用語にも読み仮名がなく、読みやすいかどうかは読み手の教養による。

    大阪の歴史の資料として、大阪市中央図書館では書庫の二冊に加え、大阪コーナーにも置かれている。

    一カ所、説明不足が気になったところがあった。

    「瑞光寺には、珍しい雪鯨橋という橋があります。(中略)漁師たちから鯨の骨をもらった禅師は、鯨の冥福を祈って鯨橋をつくりました。」
    自分は最初これを橋のたもとあたりに骨を埋めたのかと思ったが、ネットで検索したら橋の欄干が鯨の骨という確かに珍しい橋だった。かつては全てが鯨の骨で出来ていたと言われる。しかし、文字通りに読めと言われそうだが、自分はこの記述では、鯨の骨で橋を作るという発想には至らなかった。

    この部分自体は昔の南紀太地浦(現在の和歌山県太地町)での、捕鯨に関わる逸話として面白かった。
    雪鯨橋 - Wikipedia

    野添さんの祖母は明治から大正にかけて、宝塚少女歌劇団の生徒だったそうだ。
    そのため宝塚歌劇団に関する記述が所々にある。

    宝塚は温泉場ですから芸者の置屋がありました。
    (中略)ある日、祖母が(当時は15か6の少女です)二階から顔を出していると、向かいの窓に同じ年頃の芸者が居て、「あなたはいくらで売られてきたのか」と訊かれたそうです。
    まだ人が売り買いされていた時代だったのですね。


    神戸 女ひとり旅 (女ひとり旅シリーズ) 単行本 – 1990/10

    上記の『阪急線歴史散歩』と同じ出版社から出ている。

    山浦弘靖の少女向け小説、星子ひとり旅シリーズの開始(「殺人切符はハート色」)が1985年だから、この当時は女性のひとり旅が流行っていたのだろう。

    この本は一駅ごとの紹介ではない。目次を抜き出してみると、「神戸の玄関・三宮」「行楽地・六甲山」「甲子園球場」「西宮から宝塚へ」等々の名所巡りである。

    同じくひとり旅をしてみようとする女性向けの本らしく、歴史上の逸話や観光名所のみならず、ショッピングやグルメ、観劇の記述も多い。随筆色が強く、著者の学生時代の思い出などが時々語られ、人となりが知れる。ちなみに、妹がいるそうだ。

    お店の紹介とかは、今では役に立たなそうだ。
    でも、ついに三宮に東急ハンズができた、梅田にできてくれれば良かったのに、などと書いてある本は逆に20年前の雰囲気が知れて面白い。現在は梅田に東急ハンズがある。
    神戸事件の記述は、後に出たこちらの方がわかりやすかった。
    和歌の白玉を白玉としか書いてないが、白玉をお団子ではなく、真珠と知っているような歴史好きが想定読者層なのだろう。

    南京町の案内の部分で、「中国人の先生に気功法を習っていた」という話が出てくる。

    お祖母様が宝塚歌劇団の生徒だったことも関係してか、ミュージカルや歌舞伎もふくめて演劇がお好きらしい。

    異人館の甲冑をドン・キホーテのよう、と書き、『ラ・マンチャの男』という1965年初演のミュージカル版の名称を書いている。これは1972年にこのタイトルで映画化もされた。どちらの方を指しているかはわからない。ドン・キホーテは、本名をアロンソ・キハーノといい、ラ・マンチャ地方に住んでいた。
    新神戸オリエンタル劇場のこけら落としである、蜷川幸雄演出の『仮名手本忠臣蔵』を見に行って感動し、『芝居名せりふ集』という本を買って勉強したそうだ。
    また宝塚の舞台についての感想も書き、『ベルサイユのばら』について、「そのうち宝塚の古典になったりして」と書いている。

    裏表紙に著者近影がある。


    ミラーマン―鏡の黙示録

    ミラーマンというのは、昔の円谷の特撮ヒーロー番組である。地球人と二次元人の血を受け継いだ鏡の超人 ミラーマン


    一度枚数を超過して、けずったというだけあって、無駄のない物語展開。
    特撮番組の独立した後日談とあって、原作を知らなくてもファンタジーよりのSF小説として読めた。
    文章はラノベの文章として適切で、読みやすい。

    ミラーマンを見たことがない私としては、「まあ面白かった」という感想だ。

    登場人物がニュートリノの質量があるかどうか議論する場面があって、20年前のSFらしさを感じる。
    2015年、素粒子「ニュートリノ」が質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見で、梶田隆章さんらがノーベル物理学賞を受賞した。

    構成は最後の方に明かされる謎もあっていい感じ。
    物語や人物描写はやや平凡な印象も受けるが、整っている。ミラーマンという題材が特殊なのでこれでいいかも。

    前半の主題はヒロインとなる御手洗朝子の恋愛だ。
    現在の恋人である、長身で優秀な職場の同僚の男性と、過去の恋人である、異世界から来た英雄である男性のどちらを選ぶかというのが、朝子の葛藤である。
    野添さんに妹がいるせいか、バイク乗りのかわいい女子高校生の妹が登場して、狂言回しの役割を担っている。

    旅行本では特にそういう記述はなかったが、バイクや車に関する記述が多い。しかし香水や宝石と違い、車に関しては、参考文献があげられていないので、元から詳しいのだろう。旅行本は電車で移動する本だったから車に関する言及がないのか、前作との間に車が好きになったのか。

    後半はヒーローの戦いだが、そこまでの流れは男性が読んで共感できるのかな。
    無理をおしてでも研究者の男性と主人公の間に友情や葛藤を発生させるとか、ヒロインの妹を弟にして、少年とヒーローの関係を描くとか。

    この作品の敵は、異次元人に憑依された中性的な美形である。香水と宝石を身につけ、アールデコ風の館に住む。貴族が敵、という典型をやったのだろう。野添さんの「憑依」には記憶の連続性があり、人格が交代するのではない。社会に不満を持つ青年が、悪友と出会って堕落し、犯罪に手を染める話なのだろう。最後には敵同士で仲間割れしていた。

    物語の盛り上がり部分は、その人間に憑依した異次元人が呼び出した怪獣と、ミラーマンに変身した男性主人公の戦いと、それを援護するヒロイン達にある。ここはオーソドックスでいい。

    ここに登場する『阿片(オピウム)』はイブサンローランの実在する香水である。
    私はその香水を持っていたので、その香りをかぎながら読んだのだが、特撮本を読む男性でこの香水の香りを知る者は少なそう。ただ説明もあるし、名前自体が面白いからいいのだろう。

    ヒロインがかつてヒーローにもらったヒーローの父の形見のペンダントは、持ち主を守る護符であり、朝子を守って砕け散る。この「持ち主のダメージを肩代わりする護符」という概念は、トルコの目の形のナザール・ボンジュウ(目玉の形のお守り)などにみられる。

    原作の「ミラーマン」では、父の形見のペンダントは変身に使用すると、二次元世界から出られなくなるため、二次元へ永久に帰る時しか使えないとなっており、最終回でヒロインに形見として残されていた。

    著者略歴にはこうある。

    1962年兵庫生まれ。アニメ『ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年』のシリーズ構成を担当。同作品の絵本の文章なども書く。小説はこの『ミラーマン』がはじめて。



    『星のカービィ』(アニメ)の野添梨麻さん脚本回

    第10話 ボルン署長をリニュアルせよ
    第15話 誕生? カービィのおとうと
    第19話 ナックルジョーがやって来た!
    第21話 王女ローナの休日
    第26話 忠誠! ソードとブレイド
    第34話 究極鉄人、コックオオサカ
    第40話 魔獣ハンターナックルジョー!
    第47話 帰れ、愛しのワドルディ
    第54話 やりすぎの騎士! キハーノ
    第59話 最強番組直撃! 晩ごはん
    第65話 逃げてきたナックルジョー
    第72話 ワドルディ売ります
    第82話 合体ロボリョウリガーZ!
    第90話 爆走! デデデス・レース 前編
    第91話 爆走! デデデス・レース 後編


    過去作を読むに、野添梨麻さんは「車に詳しい人」であり(交通事故と車の暴走を描いた10話がこれと関連する)、「バイクに詳しい人」であり(バイクレースと暴走族を主題にした90話、91話)、中国人の先生に気功法を習っていたことがあり(主人公と格闘家の戦いと友情を描いた19話、40話、65話)、お祖母様は宝塚の元生徒で観劇の趣味があり(男装の麗人とミュージカルの21話、ドンキホーテが元ネタの54話)、お祖母様が人身売買されたと誤解されたという話を本に書いていて(ワドルディが安値で売られる72話)、『仮名手本忠臣蔵』に感動して本を買って勉強し(忠誠心が主題の26話、47話、72話)、アニメ以外のテレビ番組関係の仕事をしたことがあるらしい人(テレビ番組が題材の34話、59話)。

    「脚本家になるには、色々なことに興味を持っているといいですよ」というよくある教えは、割と真実なんだな。

    バイクと車と格闘と剣、男同士の友情や師弟や主従の関係を描き、主にアニメ『星のカービィ』のバトルアニメとしての側面を支えた脚本家。
    特撮ヒーローとか、歴史とか車とバイクとか格闘とか、男勝りな印象がある。
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    タグ : アニカビ

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