カービィ世界の本体はゲームか? KADOKAWAと組んでのマルチメディア展開は続く

    カービィの世界観を決める権限は、端的に言ってゲーム開発部とブランドマネジメント課の両方にある。このうちの後者に焦点をあてた考察。

    1 ハル研究所が広げるカービィ世界

    ここ数年のカービィのグッズにはカービィカフェやプププトレインなど、独自の物語性を付与されたものが多い。
    また、カービィ関連の書籍で、KADOKAWAから出版されるものが多くなっている。
    最近の『星のカービィシリーズ』は大塚英志氏の言う従来型のメディアミックスから、角川歴彦型メディアミックスへの移行期なのではないだろうか、と考察した。
    kadokawa_a-thumb-350x433-7846.png
    上記の図は、大塚英志緊急寄稿「企業に管理される快適なポストモダンのためのエッセイ」より引用。大きな画像はこちら  

    こういったヒエラルキーにはある程度、法的根拠がある。カービィのゲームを著作物として利用する時には、ハル研究所と任天堂の許可を得ないといけないが、アニメの映像を利用する際はそれにくわえて、CBCの許可を得ないといけないはずだ。キャンディキャンディ裁判は「小説として発表されていない原作が、一次的著作物かどうか」が争点のひとつであり、漫画家といえど、原作者の許可を得ずに作品をグッズにしてはいけないという判決が出た。著作物をグッズにするのは、通常著作物を複製する行為とされていて、独自の著作権は発生しない。

    カービィの従来のメディア展開を、一次的著作物と許可を得た二次的著作物の関係で説明する図1著作権2
    マンガ版のグッズというのも多少あったらしいが、この図では省略させてもらった。
    法的にはこうわけられる

    (c)表記がNintendo/HALのみのものは一次的著作物
    (c)表記にNintendo/HAL以外の著作権者が記載されているものは二次的著作物

    一次的著作物とはハル研究所が自ら作ったカービィ作品である。
    例えば、カービィカフェの音楽CDは表記を見るに一次的著作物だ。カービィカフェグッズもプププトレイングッズも一次的著作物(の複製)といえるだろう。
    ゲームを原作と考えてハル研究所が自ら作ったグッズや他のメディア作品を下に置くのには、法的根拠はない。
    同じくハル研究所が作った作品であり、商品なのだ。またそれらは広告も兼ねる。メジャーなお店でグッズが売っているということそのものが、ゲームの宣伝になる。商品の新発売やコンサートなどのイベントのたびにカービィがインスタ映えしたり、TwitterでRTやいいねされたりするのも、知名度やブランド力に貢献する。

    なお、グッズにはゲームや出版物と違い公式のアンケート窓口がなく、基本的に売り上げでしかニーズを判断できない。ショップで敵キャラグランプリなるアンケートが、行われた理由のひとつはそれではないだろうか。


    2 株式会社ワープスターが外部とひろげるカービィ世界

    まず、ハル研とワープスターに所属する藤江宏志さんのインタビューを引用しよう。

    __ ゲームの新作のタイミング以外にも、定期的に盛り上げていくわけですね。
    藤江 それと最近は、お店でのフェアなどにあわせて新しい側面を表現していったり、メーカーさんから「こういう新しいカービィを表現したい」というご提案をいただく機会も増えてきまして。それに対して私たちも協議しながら、新しいカービィの世界観とアートワークを協議しながら作っていくパターンも出てきました。
    Nintendo DREAM(ニンテンドー ドリーム) 2016年 12 月号



    株式会社ワープスターは『星のカービィシリーズ』の知的財産を管理している、ハル研究所と任天堂の関連会社である。アニメやマンガや小説などの公式二次創作やグッズ類を、カービィの世界観に合わせる役目はここが担う。
    元々は2001年にテレビアニメ『星のカービィ』を制作する際に設立された。ハル研の公式二次創作世界の拡大は、アニメ放映開始時期に基礎が作られたといえる。上記の記事では藤江氏について、こう記されている。

    ハル研究所入社時に始まったアニメ「星のカービィ」を担当し、ワープスターと兼任して監修を務めた。以降、グッズなどゲーム以外のカービィの監修やブランド管理に携わる。

     

    桜井政博氏去りし後、他のゲームディレクターのつくるゲームはある意味、「二次創作」である。これは『星のカービィ2』下村ディレクターの頃からあった構図ではある。下村ディレクターが辞め、熊崎ディレクターが『カービィwii』をつくるまでの時期は、ハル研内部でカービィの新作をつくるというのに試行錯誤していた時期だった。
    ブランド管理部門(ワープスター)が社外と協力して、カービィの新作ゲームを作ろうと試行錯誤していた時期でもあった。
    この時期につくられた『毛糸のカービィ』は著作権表示が珍しくハルと任天堂のみではない。こうだ。

    (c)2010 Nintendo /Good-Feel
    (c)2010 HAL Laboratory,Inc. /Nintendo

    著作権表示からするに、このゲームはグッドフィールが作った、カービィの公式二次創作ゲームなのかもしれない。
    カービィの世界観を決める本体はゲーム開発部門ではなく、ブランド管理部門の可能性すらある。少なくとも『毛糸のカービィ』の時のように、外部のクリエイターに「カービィとは何か」を説明する仕事をするのは、そちらだ。なお『あつめて!カービィ』の著作権表示は(c)HAL Laboratory, Inc./Nintendoなのだが、エスカルゴンの著作権は誰のものなのか、疑問がわいた。ゲームでアニメオリジナルキャラクターを使用する際にCBCの許可がいらない契約なのだろうか。
    ちなみにドロッチェ団は(C)2006 HAL Laboratory, Inc. / Nintendoである。



    アニメ版に近いこのデデデ大王ぬいぐるみのタグには、(c)CBC(中部日本放送株式会社)とは書いていない。しかもAmazonの情報を信じるなら2003年のアニメ放映終了後6年たった2009年にこれが作られている。ハル研究所(ワープスター)的にこれは二次ではなく“桜井氏監修のデデデ”(一次)なのだろう。個人的にアニメ版としか思えないデザインのデデデ大王のキーチェーンも持っているのだが、著作権表示は、以下のようになっている。

    (c)Nintendo/HAL
    T-ARTS


    T-ARTSはタカラトミーアーツ。
    また、スイーツパーティの著作権表示はこうだ。

    (c)Nintendo/HAL Laboratory,Inc.
    Original Game: (c)HALL Laboratory,Inc.


    グッズは新作ゲームの絵を忠実に追ってはいない。例えば、カービィカフェのデデデの顔は、『星のカービィ トリプルデラックス』のデデデの顔ではない。
    グッズや小説やマンガは桜井政博氏の作り出したものを基本にすることで、軸がぶれないようにしている印象だ。その方が熊崎ディレクターなどが新作ゲームをつくる度に、ゲームキャラのデザインを気軽に変更できていいのではないか。
    しかし、ロボボプラネットなどゲームが新発売された場合は、宣伝をかねて小説やマンガが話をあわせたりもする。



    3 KADOKAWAが広げる世界

    現在のハル研の活動を見るに、カドカワ的な「世界観」を本体とするビジネスに移行する過程であるように思う。

    kadokawa_b-thumb-350x495-7848.png
    上記の図は再度、大塚英志緊急寄稿「企業に管理される快適なポストモダンのためのエッセイ」より引用。大きな画像はこちら

    ここでKADOKAWA(角川)が、どれほどの巨大企業か少しだけ説明しよう。
    まずは現在ファミ通はKADOKAWA傘下である。メディアワークスもだ。
    つまりファミ通(アスキー)の攻略本や、桜井政博氏の著書もKADOKAWAからの出版となる。20周年記念本の『星のカービィ プププ大全』は、長年カービィマンガをコロコロコミックなどで連載してきた小学館から出たけど、25周年記念本らしき『星のカービィ アート&スタイル コレクション 』はKADOKAWAから出る。
    ニコニコ動画もカドカワであり、カービィオーケストラコンサートがニコ動で有料公開されたのも、カドカワとのつながりの強さを語っているのかもしれない。
    図版(広告)ベタ貼りになってしまうが、KADOKAWAのカービィ関連商品(の一部)をご覧いただこう。


         

    KADOKAWAは、低年齢向けのカービィ小説やカービィマンガに力を入れていこうとしているようだ。

    2著作権2

    時間と共に外部のクリエイターの影響を取り込み、拡大していくカービィ世界。
    正確にはさくま良子版以降常になんらかのマンガは連載されているし、なんらかのグッズも発売されている。
    『星のカービィ』のマンガはコロコロコミックに連載された分を全部合わせると1000万部になるというから、二次的著作物といえど長期にわたり、大量の読者を持っていることがわかる。

    情報の流れには双方向性があり、マンガはアニメに影響を与え、アニメはマンガやゲームや小説に影響を与えている。上記の藤江氏らハル研の「カービィとは何か」を外部に伝える立場の人達が、漫画家さんやアニメスタッフメーカーさんと共同でものづくりしているときに、頭の中に公式二次創作の内容が入るのだろう。
    また、ハル研究所が積極的にカービィ公式二次創作に横のつながりを作っているのではなかろうか。おそらくハル研究所(ワープスター)が自らアニメスタッフに「このヒットしたマンガを参考にしてください」とさくま版やひかわ版のマンガを資料として渡したり、小説等の関係者には「このヒットしたアニメを参考にして下さい」とアニメカービィ関係の資料を渡したりしているのだろう。

    初代『星のカービィ』の時にはカービィの世界観は、桜井氏個人のものだったと考えていいだろう。ただし、その時点でも著作権は会社にある。『星のカービィ 夢の泉の物語』の時にはどうだったかわからないが、もう“カービィ世界”は会社の財産として『カービィのピンボール』などの開発も進んでいたのではないか。

    ここでゲームの続編のディレクターは必ずしも、初代のディレクターではないという例として、『バイオハザード』シリーズのディレクターを見てみよう。

    『バイオハザード』ディレクター:三上真司氏
    『バイオハザード2』ディレクター:神谷英樹氏
    『バイオハザード3 LAST ESCAPE』ディレクター:青山和弘氏
    『バイオハザード CODE:Veronica』ディレクター:加藤弘喜氏
    『バイオハザード0』ディレクター:三上真司氏
    『バイオハザード4』ディレクター:三上真司氏
    『バイオハザード5』ディレクター:安保 康弘氏
    『バイオハザード6』ディレクター:佐々木栄一郎氏
    『バイオハザード7 レジデント イービル』ディレクター:中西晃史氏

    なお、同じくカプコンの『逆転裁判』シリーズは巧舟氏がほぼ全てにディレクターとしてかかわっている。
    25周年になる星のカービィは、初代以外のディレクターもがんばっているシリーズといえる。


    4 今後のカービィ世界はどうなるのか

    簡単に言って、公式のカービィ世界は多様化し拡大し続ける。今はそれが加速している時期だろう。
    単純化すれば以下の四つの流れがある。

    1. ハル研社内でゲームが、作られ続けることによる拡大。
    2. ハル研社外で関連ゲームが、作られ続けることによる拡大。(例:大乱闘スマッシュブラザーズ)
    3. ハル研が社外と協力して、ゲーム以外の一次的著作物である様々な関連商品を生み出していくことによる拡大。(例:カービィオーケストラコンサート)
    4. KADOKAWAなどノウハウを持つ社外が、積極的に二次的著作物である関連商品を生み出していくことによる拡大。(例:つばさ文庫のカービィ小説)

    ハル研内でつくられるゲームが、ハル研製のゲームのみの血を受け継いだ“純血種”であることを期待したい人もいるだろうが、ゲームスタッフも入れ替わるし現実的ではない。そろそろマンガ版カービィを読み、アニメ版を見ていた世代が入社する、した時期なのではないだろうか。

    今後カービィ世界はより多くの人に愛され、カービィとは何か、みたいな問いに答えることはどんどん困難になるだろう。



    参考
    大塚英志緊急寄稿「企業に管理される快適なポストモダンのためのエッセイ」
    http://sai-zen-sen.jp/editors/blog/sekaizatsuwa/otsuka-%20essay.html

    社長が訊く『毛糸のカービィ』
    https://www.nintendo.co.jp/wii/interview/rk5j/vol1/index.html

    祝『星のカービィ』新シリーズ1巻発売! なんとひかわ先生から直筆コメントが!!!!
    https://corocoro-news.jp/comic/1437

    関連商品一覧|カービィWiki
    http://ja.kirby.wikia.com/wiki/%E9%96%A2%E9%80%A3%E5%95%86%E5%93%81%E4%B8%80%E8%A6%A7


    ※個人的お願いですが、カービィwikiなどにゲーム情報やグッズ情報を掲載される方は、著作権表記についても記して下さると参考になります。

    ※広告べたべただけど、お小遣い稼ぎ? と思う人もいるかもしれないので解説。広告は著作権法で例外とされているので、公式画像を合法的に使用できるのです。この記事は一応「著作権ビジネス」の話をしているので公式画像の無断転載とかしたら、一気に説得力が落ちる気がします。引用として許される条件はかなりシビア。まあ買ってくれれば嬉しいですが。
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