ヘラクレスとイーピトス

    「援助者の男が殺される話」つまり、ヘラクレスとイーピトスの話についてです。神話にはなぜイーピトスが殺されたか、書いてありません。

    「(ヘラクレスは)結婚しようと思って、オイカリアーの支配者エウリュトスが、彼とその息子たちを弓術で負かした者に褒美として娘のイオレーを妻として提供しているのを知った。そこでオイカリアーに来て、弓術で彼らを負かしたが、結婚はできなかった。息子の中の年長のイーピトスはヘーラクレースにイオレーを与えようと言ったが、エウリュトスと他の息子たちは、子供を作って、また生まれた子供を殺しはしないかと心配だと言って、拒否したからである。暫く後にアウトリュコスによってエウボイアから牛が盗まれた時に、エウリュトスはヘーラクレースのしわざであると思ったが、イーピトスはそれを信ぜず、ヘーラクレースの所に来て、彼がアドメートスのために死んだアルケースティスを救って、ペライから来るのに出遇い、ともに牛を探すようにと誘った。ヘーラクレースはその約束をして、彼を歓待していたが、再び気が狂って、ティーリュンスの城壁から彼を投げた。」

    ギリシア神話

    他の資料にあたってみたら、「ヘラが呪った」以上の、ヘラクレスが狂気に陥った理由とか、書いてあるのかもしれませんが、とりあえず、ネットで検索しても出てきません。

    まあ、狂人には関わらない方がいいという、教訓話なのかもしれませんが、ギリシアの人は「ヘラクレスが狂気に陥ったのは、ヘラのせい」というだけで納得してたんでしょうか。うつ病を医学書に記した、古代ギリシア人は、それなりに狂気に対する理解があったはずです。それで思ったんですが、ヘラクレスの狂気って「ヒステリー」だったんじゃないでしょうか。つまり思い通りに行かないことがあったり、プライドを傷つけられたりすると激昂して暴力的な行動に出るというタイプの「狂気」です。解離傾向? 自己愛性人格障害?

    プロレスラーのような英雄ですが、そんなものではないかと。こういう人はよくいます。ギリシア人も「力自慢の成功者なら、そういうこともありそう」とかいう納得の仕方をしていたので、この話が今に至るまで神話として残っているのではないかと。

    じゃあ、なんでヘラクレスはイーピトスに対して、怒ったのでしょう? イーピトスが空気を読めないタイプで、ヘラクレスの心の地雷をついうっかりふんじゃった、という可能性もありますが、たぶん寝ようとして断られたんでしょう。ギリシア神話なんて男同士の「友情」よりも「愛情」の話の方が多いのですから。ヘラクレスも女とも男とも寝るタイプの英雄です。
    ヘラクレスはイーピトスの自分に対する好意を「愛情」と思って口説いたが、イーピトスの方は「友情」のつもりだった。この解釈なら英雄を助けに来た貴公子が、いきなり殺される話は、変な話でもなんでもなくなります。っていうか、少年愛が普通にある社会なら、よくあるトラブルだったんじゃないでしょうか? 男の男に対する「あなたが好きです」が、「友情か愛情か」なんて行き違いは。そう思うと古代ギリシアらしいひねりのきいた話ですね。
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