アニメ『星のカービィ』を見て、カタツムリの解剖図を検索してみた

    私は生物番組を見るのが好きなので、NHKの『ダーウィンが来た!』も前からよく見ているのだが、耳を澄ましてもスタッフロールを見ても、ヒゲじいの声優さんとエスカルゴンの声優さんが同じ龍田直樹さんだとは信じられない。

    さて、今回はアニメ版『星のカービィ』の88話「はだかのエスカルゴン」を見た人の多くが抱く疑問、「カタツムリの殻の中はどうなっているのか?」その他についての生物学的考察。

    私は子供の頃に殻の破片をつけながら、はっているカタツムリを見たことがある。
    その記憶では、殻が割れているカタツムリは、ナメクジにこぶがついたような形状だった。
    背の平らな、なめくじに殻をのせても殻が転がり落ちてしまうだろうから、殻の中にもある程度身があるんだなと子供心に思った。
    その後、忘れていたので「カタツムリの体はどうなっているのか」を旺盛な知識欲にかられて検索してみた。

    というわけで、カタツムリの解剖図。
    でもこの解剖図だと、自分は最初、呼吸口の位置を誤解してしまったので、図書館に行って子供用のカタツムリの観察本を借りてくることをおすすめする。

    それで、カタツムリの解剖図等を見たりして、疑問に思ったりわかったりしたことをいくつか。
    さらに、2016年4月はじめから、カタツムリを飼い始めて知ったことを元に加筆修正。
    文中の写真はすべてうちのカタツムリ(ウスカワマイマイ)。
    カタツムリ飼育日記(4月分)



    エスカルゴンの脳はどこにあるのか。
    現実のカタツムリは目の根元であり、口の後ろである部分に脳がある。見て想像できる位置だ。
    しかしエスカルゴンは口が大きいから、そこにあるとなると脳が小さくないか?
    でも、63話でカゼになった時は、うつぶせになり、目の根元、上あごの後ろの上の部分を冷やしていた。
    どうやらカタツムリ準拠らしい。
    手塚治虫が『火の鳥』で描いた「人間並みの知能を持ったナメクジ」は、頭の部分に大きな脳があった。『南国少年パプワくん』の巨大カタツムリ、イトウくんの脳も、目の根元の口の後ろあたりにあるのだろう。
    なお、デデデの脳がどこにあるかは、83話のMRI写真で人と似たような位置にあると判明済み。

    カタツムリには耳がなく、音は聞こえない。カタツムリには蝸牛はない。
    第31話でヘッドホンを目の脇にはめているので、エスカルゴンの耳はそこなんだろう。しかし目の脇の肉は、目玉を動かす筋肉しかなさそうな薄さ。ずいぶんと、小さな隙間におさまっている耳だな。
    参考『カタツムリの謎

    カタツムリの呼吸口は、ものを食べる口とは別で、殻の入り口にある。呼吸する口を地面につけていたら、息苦しそうなので、そういう作りなんだろう。エスカルゴンはものを食べる口をふさげばしゃべれないし、マスクもその口にしていたので、ものを食べる口と呼吸する口はあの姿に進化する過程でひとつになったらしい。あと、カタツムリはしゃべらない。鳴き声も立てない。エスカルゴンの場合、やはりあの細いのどに声帯があるのだろう。
    ↓カタツムリの呼吸口。クリックで拡大。
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    カタツムリの歯は歯舌といい、舌と一体化している。これで主に植物をけずりとって食べる。エスカルゴンは雑食に進化する過程で、舌と歯がわかれたようだ。
    参考 カタツムリの生活

    カスタマーが「エスカルゴン閣下はナメクジ閣下に退化されたので?」と聞いているが、生物学的にはカタツムリが進化してナメクジになる。貝なのに殻を捨てるとか、勇気ある進化だな。

    カタツムリは巻き貝なので、殻は平たく見えても多少は円錐状になっている。さざえの殻と同じ。
    殻のとがった方を上にして右巻きとか、左巻きとか区別する。
    エスカルゴンの殻は完全な左右対称。

    エスカルゴンの殻の口の位置が現実のカタツムリと逆。巻き貝の殻口の部分は頭側にある。でもエスカルゴンを見ると足側にあるんだよね。殻の中にもぐる時に、もぐりにくそう。こういうデザイン部分はエスカルゴンには腕があるとか、そういう擬人化とは別に生物学的に正しい方がよかったのでは。
    新・ざわざわ森のがんこちゃん』のツムちゃんは殻の口が頭側にある。さすがはNHKの教育番組といったところか。そして気のせい程度に殻が非対称で、右巻きのカタツムリらしい。
    殻の口が頭側っていうのはこういうこと↓
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    エスカルゴンの体って、殻に入る部分の肉がらせん状になっていて、奥の方というか、先の方は主に内臓で色が濃いとかそういうのでは?
    さざえの壺焼きでも、先の方は肝だよね。
    IMG_37281.jpg
    だからハンマーで殻をまっぷたつにたたき割ったら、内臓へのダメージがでかそう。現実のカタツムリなら致命傷だな。
    ちなみにエスカルゴ料理では内臓の部分は取り除いて、肉の部分だけを食べる。

    カタツムリは強力な組織再生能力を持っている。しっぱを切っても再生する。人体再生のためにカタツムリを研究している人もいる。実はエスカルゴンは、ケガがなおりやすいという、特技を生かした職についているのかもしれない。
    参考 カタツムリのシッポ切り
     組織再生・再生医療とは - 東京薬科大学 生命科学部

    貝類の多くの血は透明に近いブルーである。カタツムリの血もそうだ。つまりエスカルゴンも、もしかしたら血が透明なのかもしれない。
    参考 カタツムリに血液は流れているの

    ハンマーで殻を割られたときには、実はかなり出血していたが、透明なので本人以外には見過ごされたとか、そういう可能性も。
    参考 ホタテガイは血があるのか?

    まあエスカルゴンの口の中が赤いのは、人と同じで粘膜では赤い血の色が透けているからだろうと思われる。
    また顔を赤らめている(顔の表面に普段より多く血が流れていることによると思われる)描写が多いので、進化の過程で血が赤くなったんじゃないかな。
    なお、現存の貝類にも血が赤い種類はいる。赤貝などがそれだ。
    参考 アカガイ マルハニチロ

    現実のカタツムリは寝るときに殻に入って寝る。そうして敵や乾燥から身を守るのだ。
    乾燥しているときや冬眠、夏眠の時は膜を張って眠る。しかし環境が悪くないときは、足を少し出した状態で寝ていることもある。
    ↓飼育下のウスカワマイマイの寝姿(ガラス瓶にはりついている)
    IMG_40841.jpg
    しかしエスカルゴンは殻にまったく入らずに寝るよな。お肌が荒れそう。
    ちなみにペンギンはお腹を下につけた、うつぶせの姿勢で寝る。でもデデデがそうやって寝ていると、やられポーズにしか見えないだろうな。
    参考 ペンギンの日々と一生

    カタツムリは夜行性である。鳥などの天敵が活動しない時間帯であること、昼だと肌が乾燥しがちなことなどが理由らしい。
    参考『カタツムリの謎
    私が飼育しているカタツムリは、室内だからか、昼間でも活動していたりするが、日向に置くとおくとえさの白菜やレタスの陰に隠れる。
    テラスで日光浴するカタツムリは、斬新ってことか。エスカルゴンは肌にクリームでも塗っているのだろうか。それとも自前のぬるぬる粘液で乾燥をふせいでいるのだろうか。カタツムリの粘液には肌を乾燥から守る働きがあり、これを利用したのがカタツムリクリームらしい。だが、市販のそれにはどんだけカタツムリ成分が入ってるのだろうか。

    カタツムリの殻は、サザエなどの海にいる貝に比べて薄い。海の中だと浮力が味方するので、軽い力でも重い殻が動かせる。デデデがハンマーでサザエの殻を叩いてみても割れなかったのは、正しい描写と言えよう。

    カタツムリは殻の小さなひびを自分を修復できる。
    カタツムリ 日高敏隆には、ウスカワマイマイの殻にかなり大きな穴をあけて、それが修復される様子を撮影した写真が載っている。それを見ると、最初にデデデに開けられた程度の穴なら、なおる気がする。
    エスカルゴンが背負っているおおきな殻も、エスカルゴン自身が外套膜の機能で、自らの殻をつくり、成長させているわけで、その能力があれば修復は出来るだろう。88話のような破片が揃っている状態なら、マスキングテープやガムテープで貝殻を固定したまましばらく安静にして、カルシウムのふくまれている食物をとれば、エスカルゴン自身の粘液で殻が修復されたんじゃなかろうか。人間の骨折と同じような感じ。エスカルゴン自身もそれを忘れているのか、ずいぶん悲観しているが。まあ問題は殻が割れたことよりも、デデデが殻をはがそうと追い回しているってことなんだろうけど。ちなみにデデデがたたいた殻の後ろ斜め上あたりに、普通のカタツムリの心臓がある。ウスカワマイマイだと、半透明の殻をすかして心臓が脈打っているのが見える。エスカルゴンの心臓も同じ位置にあったとしたら……。
    参考リンク でんでんむし 2.貝殻の形の多様性

    カタツムリの目は明暗がわかる程度だと考えられている。文字が読めるエスカルゴンの目は高性能だな。
    それから、カタツムリの目にはまぶたがない。目を閉じるときには、目を引っ込める。
    エスカルゴンは目を引っ込める機能が退化して、まぶたが発達したということに。

    デデデがよく握っている、エスカルゴンの目の下の部分は、カタツムリでは大触覚という。

    エスカルゴンのひげは、カタツムリでいうと小触覚の部分じゃなかろうか。つまりあのひげで味やにおいを感じている可能性がある。まあ花粉症やカゼの時の鼻水は、口の上の目に見えない穴から出ていたけれどね。33話でもそのあたりをつまんでいたような。

    人間は止まっている絵を連続して見せられると、それを動いていると認識する。これがアニメーションの原理だ。人間の目には1秒に15枚の絵があれば動いて見える。しかしそれは時間分解能が15Hzの人間だけのことだ。
    「ヒトの時間分解能は15Hz(1秒間に15回)から60Hz、ハエなどの昆虫では150Hzほどと言われています。(中略)いっぽう、カタツムリの時間分解能はわずか4Hzほどと考えられています。」『カタツムリの謎』より。
    1秒に4枚の絵をパラパラされれば「なめらかに動いている」と認識するカタツムリよりも、1秒に150枚未満は「紙芝居にしか見えない」ハエをアニメ監督にすべきだな。そうなると人間にはオーバークオリティか?

    そこらを這っているカタツムリの年齢は3年程度。小さいカタツムリと大きなカタツムリでは、大きくなる種族のほうが一般に寿命は長い。エスカルゴンの大きさなら、寿命は数年じゃなさそう。エスカルゴンは設定上、年配の男性らしいが、寿命の短い種族だから若くして年寄りになるだけで、実はデデデより実年齢が下とか、そういう見かけと年齢の不一致とかないんだろうか。逆にあの言動で、フームの100倍年寄りとか。

    カタツムリは変温動物である。だから寒さ暑さには弱く、冬眠も夏眠もする。第41話の「寒くて眠れないでげす」という、年配の女性のような台詞は、寒さに弱いカタツムリらしい台詞だったのかも。
    参考 カタツムリは、冬はどうしてすごすの

    カタツムリの足(腹足)は、殻の下あたりの部分。波打たせて前進する。アニメの初期の頃はそういう表現もあったが、後期は長いスカートをひきずって歩いている人みたいに二足歩行っぽい動きをしている。エスカルゴンはジャンプも出来る敏捷なカタツムリ。
    なお、『ジャム・ザ・ハウスネイル』というクレイアニメに登場するカタツムリっぽいなにかは、腹足を波打たせて前進する。

    カタツムリは自分の分泌した、粘液の上を滑るようにして歩く。カタツムリの這った後の銀色の筋がそれだ。エスカルゴンはたぶん違うだろう。もしそうなら、掃除をいいつけたら、逆に粘液でカーペットが汚れるんじゃなかろうか。そして抱きつかれたら、デデデの服が汚れる。

    カタツムリの肌は乾燥を防ぐために、始終しっとりとした粘液におおわれている。もしエスカルゴンもそうだとしても、手だけは違うだろう。手もヌメヌメしていたら、読む度に本をだめにしてしまうし、ドライバーもまともに持てない。また全体がヌメヌメしていたら、綿や絹の服は着ているうちに透けて体に張り付いてしまうだろうから、エスカルゴンの衣装は全てビニール製ということに。

    エスカルゴンはアニメで見る限り「薄紫のカタツムリ」である。しかし実は「色白で半ば透ける体を持ち、光の加減によっては、薄紫の影がついて見えるカタツムリ」なのではなかろうか。以下のサイトの写真は本物のエスカルゴ(ポマティア)の写真だが、たしかにうっすーい紫にも見える。
    参考 世界で初めてエスカルゴ・ブルゴーニュ種の養殖に成功した「三重エスカルゴ開発研究所」に行ってきた

    エスカルゴンの殻は緑色だ。
    実際に殻が緑のカタツムリがいるそうだ。実はタニシの仲間らしい。このアオミオカタニシアニカビ放映に数年先立ち、海洋堂でチョコエッグになっている。さらに緑色なのは、殻ではなく体だそうな。殻は半透明。エスカルゴンも裸にしたら、殻の中の肌(外套膜)が緑の可能性がわずかにあるのかも。
    から自体が緑色なのは、パプアミドリマイマイだ。


    エスカルゴンの足の先は地面から浮いて、尻尾のようにふりふりしている。だが、カタツムリの場合そこは地面についている。犬のようにしっぽをふるために、ああいう進化をしたのだろうか。そうやって体の大きさの割に接地する面積を減らしていった結果、壁に貼り付けなくなったのでは。

    エスカルゴンの腕にはひじがあるが、骨がないのにひじがあるのか。軟体生物らしくもうちょっと触手っぽい、丸く曲がる腕でもよかったような。やっぱ気持ち悪いかな。

    カタツムリの肛門の位置は、前述の呼吸口の側面である。小さく、普段は閉じているので、よく見えない。そして、カタツムリは小便用の穴が肛門と別にあるわけではない。
    水生の貝類の場合、糞はそのまま水に流されていくので、その位置で問題はないのだろう。
    カタツムリが糞をしている写真を撮影したが、不鮮明なので呼吸口の脇というのはわかりにくいだろう。カタツムリ飼育日記(4月分)
    もしエスカルゴンも同じだとすると、どういう姿勢でトイレに座っているのか。便器の上で腹ばいで丸まっているとか?
    ちなみに77話のロイヤルアカデデデミーの回で、デデデがエスカルゴンがうんちをしている絵を書いているが、肛門は殻の後ろの位置にあると想定されているみたいだ。まあ、カタツムリが糞をしたあと、斜め前に進むとああいう位置関係になるけどね。デデデがエスカルゴンの体のつくりを知らないだけか、それともエスカルゴンはそういう方向に進化したのか、謎である。






    さて、迷ったがアニメ放映当時の掲示板のログ等を見るに、検索する前の自分も含め知らない人の方が圧倒的だろうから、書いておく。

    雌雄同体であるカタツムリの生殖孔(生殖口)は殻の中にはない。意外な所にある。生殖孔は人でいうと「頬のあたり」にある。
    IMG_40021.jpg
    ↑この写真の目の根元の首のあたりの白くふくらんででいるところ

    その穴の中に陰茎と膣が収納されている。普段はその穴は閉じていて、知らなければ気がつかない。交尾の際にその穴が開いて、うねうねと動く細長い陰茎が出て、その穴の中にある互いの膣に挿入される。膣の方向は人類とは逆で、頭の方から入り、足の方に向かっている。産卵もその穴からするので、人でいうと頬や首のあたりから、体の割に大きな丸い卵が出てくる。画像など詳しくは「カタツムリ 生殖孔」で検索。モザイクとかないから、グロいかもしれないけど。

    カタツムリはその生殖孔を互いに密着させて交尾する。頬のあたりにあるのは、カタツムリが這った状態で、密着させやすい部分だからだろう。
    IMG_40721.jpg
    ↑ウスカワマイマイの交尾
    カタツムリの交尾(動画)
    上の動画を見るとわかるが、カタツムリの陰茎は体の割に長い。
    エスカルゴンを現実のカタツムリ準拠で考えると、「触手状のアレの方が腕より長い」ということになるのでは。
    また、ほ乳類と違い、カタツムリの精巣は睾丸という形で体外に出てはいない。生殖腺は殻の奥の方にある。

    エスカルゴンの頬はどうみても内側には口しかなさそうだし、その下には首や腕があるから、生殖孔があるとしたら、人で言うと胸のあたり? あるいは脇腹かな。
    おしりは足と胴体の境目という意味なら、殻の下あたりだが、密着させやすい場所じゃない。
    カタツムリらしくうつぶせになって、お互いに片腕で抱き合うようにして、脇腹を密着させるか、立ったまま寄り添って脇腹を密着させる方法が合理的に思える。横になるなら、人で言う腹の下あたりでもいいかもしれないが、それだとカタツムリなのに這わないのかと。エスカルゴンはよく横になって寝てるけどね。普段接地している部分にあると、すれるんじゃないかとは思う。まあカタツムリは接地面にある口を、普段体内にしまっているような生き物だけどね。
    エスカルゴンが雌雄同体じゃなく、単に雄なら、男性器だけがどっかにあるということになる。でもそれは、殻の中じゃなかろう。ペンギンっぽいデデデは、総排出腔だったりするかもしれない。でも第12話でトイレ行きたいって、前の方を押さえていたよな。一般的な鳥に膀胱はないはずなのに、おしっこががまんできるなんて、かなり進化しているんだな。鳥類が人類みたいな家に住もうとしたら、それこそおしめが必要かも。

    カタツムリの生殖器が殻で隠れる部分にない理由は、現実のカタツムリの殻は脱げないのだから、殻の中にあったら交尾の難易度が上がるからじゃなかろうか。

    カタツムリは殻を脱ぐことは出来ない。肉が殻の内側にくっついている部分があるからだ。
    簡単に手に入る貝類の代表の、あさりも殻から無理矢理引きはがしたら、貝柱の周囲の肉が破損して致命傷を負うだろう。
    だから、かたつむりの殻をとったら死ぬ、は正しい。
    でもエスカルゴンの殻はそういう問題なしに脱げていたようなので、殻と身は接着していないのではなかろうか。

    しかしエスカルゴンの種族の殻が脱げるとしても、いちいち交尾の際に脱いだら殻で保護されている内臓が薄皮一枚で露出するだろうから、他の種族に身をつつかれるリスクが高まる。殻を失うリスクもある。例えば、ペンギンなら前戯を除けば、交尾は一瞬だ。一般に鳥類は短く、陰茎を持つ水鳥などでもつながっている時間は数十秒。
    参考『生殖・交尾大全―イラスト事典』(←ペンギンの交尾について絵付きで4ページも書いてある本)
    しかしカタツムリは、野外で軽く前戯をした上で、数時間交尾する。実際に見たけど、うちのウスカワマイマイは6時間半くっついていた。
    参考 カタツムリの交尾
    だから、殻を脱いで数時間も無防備な姿をさらすのは、生存に不利なんじゃなかろうか。
    人間が安心して服を脱げるのは、家があるからだ。そして服は何着もある。
    なお、殻を脱げるヤドカリも、生殖孔は足の根元という、殻の外に出る部分にあり、交尾は殻に入ったまま行う。ヤドカリにとって、自分に合う殻は貴重品だ。参考 オカヤドカリの繁殖
    NHKが食事時にヤドカリの交尾場面を流してくれたよ。
    422回「驚き!発見!ヤドカリの素顔」│ダーウィンが来た!生きもの新伝説

    つまり、カタツムリに対して「殻を脱げ」は内臓を見せろという意味になるが、生殖器を見せろという意味にはならない。あえてそれを言うなら「胸や脇腹をよく見せろ。そして、触らせろ」になるだろう。
    でもエスカルゴンの生殖口が実際のカタツムリと同じような位置にあるなら、デデデはそこを普段から触っているよね。
    エスカルゴンの体の構造がカタツムリに近いのなら、エスカルゴンに殻を脱げ脱げ言っているデデデ陛下は、別にセクハラ発言をしている訳じゃないんだな。

    エスカルゴンが殻を脱ぎたくなかったのは、性的羞恥心の問題じゃなくて、名誉の問題だろう。たとえば、自分の裸が異種族から見て、グロいと思っていたからではなかろうか。
    普段デデデのことをデブだのみっともないだの言っているエスカルゴンだからこそ、デデデに「おまえの裸は実にキモイぞい(笑)」とか言われたくなかったとか。
    まあ肺や心臓が薄皮一枚でさわれる状態とか、身の危険を感じるだろうな。

    そもそも「裸になる」が文脈により「相手の求愛を受け入れる」を意味するのは、始終服を着ている人類独特の文化だ。デデデも服を着ている種族だから、もしかしてそういう方向に考えたりするのかもしれないが、普段衣服を着ないエスカルゴンの種族にはそういう文化はないんじゃなかろうか。だから「脱げ」といわれても、「内臓見せろ」にしか受け取れないとか。

    カタツムリの求愛の場合、体をくっつけて相手が嫌がらなければカップル成立だ。体をすり寄せたが、相手に逃げられる、というのはカタツムリによくあること。

    ペンギンは歌を歌うに始まり、ご飯をおごるなど、色々な段階があるが、ペンギンの雄にとっては抱きしめて相手が嫌がらなければ、カップル成立だよな。
    人間の女性に接吻と抱擁を試みるペンギンの雄の動画←餌をもとめているように見えるかもしれないが、違う。人間とペンギンを同サイズにして考えると、人間にも何を求めているのか理解できる仕草。

    カタツムリは群れをつくらない。つがいもつくらない。
    一カ所にたくさんいるという意味で群れることはあっても、魚や鳥のように群れで行動することはない。
    ちなみにオウサマペンギンの群れには王様がいない。
    ペンギンは群れは作るが、リーダーがいない生き物なのだ。
    ペンギンっぽいけど、デデデは王様の概念がある点では進化しているよな。
    同じ鳥類でもニシコクマルガラスは、誰が群れで一番偉いかを決めている。
    第87話 「襲撃! カラスの勝手軍団 」(脚本 国沢真理子)は、カラスの群れにリーダーがいて、さらにそれが積極的に食料を分け合うという、生物学的に正しいストーリー。
    参考 ニシコクマルガラス - Wikipedia

    しかし、エスカルゴンは群れとその序列を理解しているよな。ずいぶんと社会的な貝だ。
    親子関係も理解しているし、あの言動を見る限り、つがいの概念もありそう。
    カタツムリには夫婦で子育てなんてものはなく、産卵は土の中にして、勝手に生まれ育つ。卵から生まれる子供は、親の顔を知らない。
    しかし、エスカルゴンの母親はエスカルゴンを育てたらしい。
    父親はどうしたんだろ。年齢的に自然死でもおかしくなさそうだが、交尾の後そのままお別れするカタツムリだから、エスカルゴンの種族は全て母子家庭って可能性も。
    ちなみにエスカルゴンの母親が雌雄同体だとするとエスカルゴンの父親が「母親」として、エスカルゴンの兄弟姉妹を産んで育てているという可能性があるな。
    なおカタツムリは自家受精も可能なので、エスカルゴンには最初から父親がいないという可能性もなくはないな。

    南極の皇帝ペンギンはオスが絶食して抱卵する。寒い地方では大柄で脂肪がある方が、生存にも子育てにも有利。
    デデデが始終何か食べてるのも、「寒い地方」の「オスが絶食して卵を抱く」種族の子孫だからかも。

    つがいをつくる意味は主に「協力してなわばりを守る」「協力して子供を育てる」「相手を束縛して、より確実に自分の子供を産ませる」だ。

    ちなみにペンギンの交尾は年に一度だが、つがいは年中イチャイチャしている。ペンギンのつがいは何年にもわたり維持されることが多い。時々同性のつがいもいて、『タンタンタンゴはパパふたり』という絵本にもなってる。

    鳥類の子孫っぽいデデデがなわばりを守るために、種族や性別気にせず気に入った相手をパートナーとして連れ歩いているのはわかるが、貝類のエスカルゴンの側はどうなんだろ。
    魚類ならカクレクマノミのようになわばりと子育てと貞操を理解している種もいるが、貝では聞いたことがない。背骨は偉大だな。
    貝がどのような進化をすれば、愛の名の下になわばりを持ったり、子育てしたり、相手を独占しようとする関係を理解するんだろう。五感と脳が発達すれば、なんとかなるんだろうか。

    専門家の間で今議論中の話題なので、たしかなことはいえないが、カタツムリは交尾の際に相手に細い骨のようなものを刺して、自分と交尾した相手が他のカタツムリと交尾するのをふせいでいるらしい。単にケガを負わせて、動き回れないようにするという話ではなく、何らかの薬物をそれによって注入しているらしいのだ。相手の寿命はそれによって縮む。その相手に刺すものを恋矢(交尾矢)という。
    参考リンク「恋の矢」は寿命を縮める:カタツムリの愛と暴力

    より詳しくは「カタツムリ 恋矢」で検索。なお、カタツムリとよばれるもののうち、全ての種族が恋矢を持っているわけではない。上でリンクした解剖図にも矢嚢という部分が示されているが、これはその恋矢を入れておく袋のこと。

    どうやらカタツムリの進化は、つがいをつくって束縛する方向ではなく「体内で何らかの薬物を合成し、交尾相手にケガを負わせるような方法で注入することにより、相手を操る」という方向に行っているらしいのだ。
    道ばたのミスジマイマイは、恋があっても愛がない世界を生きている。

    エスカルゴンの「愛している」が「恋矢を刺して、操りたい」という意味だったらどうしよう。
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    タグ : アニカビ

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