「バリ島」ミゲル・コバルビアス著を読んで

    「バリ島」ミゲル・コバルビアス著を読みました。バリの文化や歴史、神話について書かれた本です。

    これは1930年代にバリに住んだ、画家であるメキシコ人によって書かれています。
    この時代のバリ島は、オランダの植民地でした。

    ちょうどそのころ、私たちは新しい家を離れ、アメリカに帰らなければならなくなった。帰路、私たちはパリに立ち寄ったが、そこでは植民地博覧会が開かれていた。ウブッドのチョコルデの一族、スピースが住む村の領主、舞踊団や楽団のリーダーなど、バリの友人たちが来ていた。舞踊団や楽団は博覧会の話題をさらっていた。



    この後、バリには白人の観光客が押し寄せたと筆者は書いています。
    著者はバリ人は自然と調和して生きていると賞賛し、こう書きます。

    バリ人がこの環境にいるのは、さえずる小鳥や蘭の花が中央アメリカのジャングルに、鉄鋼労働者がピッツバーグの薄汚さの中にいるようなものだ。知己のバリ人がパリ博覧会に「移植」されているのを見るのは気のめいることだった。彼らはパリでは夏のまっさかりというのに寒がり、みじめに重いオーバーコートを着たり、アメリカインディアンがするように毛布にくるまって震えていた。



    当時は観光客誘致のために、宗主国の政府が博覧会で、植民地の異国情緒をアピールするのはよくあることでした。ですが、疑問に思う人も少数いたということです。そしてそういう疑問に思う人も、バリ人を動植物に例えてしまうような時代でした。

    詳しくは「植民地博覧会」という本が出ていますので、そちらを参考にしてください。

    これで思い出すのは、NHK一万人訴訟です。
    NHKは、「JAPANデビュー」という番組で、1910年の日英博覧会で、日本が台湾の原住民であるパイワン族を「人間動物園」の名のもとに見世物にした、と報道しました。それで「人間動物園」という名の展示ではなかった、侮辱だという台湾人や、日台友好に反する番組を見せられたと主張する、視聴者などからNHKは訴えられました。

    わたしはたまたまこの番組を見て、単にその当時の日本政府の人が悪趣味だったのかとなんとなく思っていましたが、この本を読んで違うことに気がつきました。
    おそらく当時の日本政府は「南国の楽園 台湾」をアピールして、白人富裕層の観光客を増やしたかったのでしょう。
    観光客が増えると台湾人の収入になり、日本政府の税収になります。

    今後沖縄が独立したりしたら、現在沖縄県が沖縄県民に紅型を着せて、博覧会で観光誘致をしていることも、日本政府の植民地政策だったという話になるんでしょうか。

    人間には他民族を野蛮人と思いたがる意識だけではなく、過去の人間を野蛮人と思いたがる意識があります。
    NHKの番組は、そういう心理につけ込んでいます。

    未開の民族に対する無邪気なロマンティシズムや、先進国民の優越感に満ちた好奇心について、この本ではこう記されています。

    いまだに旅行者には、絵に描いたようなセミ・ヌードの浅黒い肌の野蛮人の中で自分だけが「唯一」の白人でいたいというロビンソン・クルーソーがいっぱいいるのである。



    こういう「失われた楽園」幻想は、今もバリ島や台湾などのアジアの観光地を支えているのです。
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