スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。

    赤く塗られた肩 -レッドショルダー三部作についての考察

    らくしゃさ@赤い耐圧服のドクペ さんの企画に@hosiniiruとして参加させていただきました。




    お題は「赤」ということなので、OVA版と吉川惣司小説版のレッドショルダー関連3作品について簡単に考察。ネタバレあり。

    レッドショルダー関連三作品のリスト

    吉川惣司著の『装甲騎兵ボトムズ』のノベライズの刊行はこの順番だ。
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』(1988年6月)
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』(1988年12月)
    『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』(2009年1月)

    しかし、アニメとして発売されたのは、この順番だ。
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』(1985年)
    『装甲騎兵ボトムズ レッドショルダードキュメント 野望のルーツ』(1988年)
    『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』(OVA版は、2007年から2008年。劇場版は2009年)

    作品中での時系列順に小説を並べるとこうなる。(OVAもタイトルが一部違うが同じ)
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』
    『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』


    帰還兵キリコの物語

    OVA版『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』では、「キリコの支配に対する反抗」がテーマだった。キリコは反抗的であったため、他の三人とともに前線に送られる。そこでそれぞれひどい目にあう。

    高橋監督へのインタビューだと、ボトムズ本編は戦争で心に深い傷を負ったキリコが、新たな仲間を得て、人間らしさを取り戻していく話だという。
    参考 VOTOMSは戦争に傷付いた男の社会復帰ドラマ?
    http://homepage3.nifty.com/mana/votoms-kiso-siryou2.html
    だから、上記のOVA三作で、キリコが戦災孤児として、若い兵士として、どれだけ辛い体験をしたかを描写したことにより、本編のテーマがより深くなった。

    キリコについては、高橋良輔監督自らが脚本を書いた回である、テレビシリーズの第4話の過去を思い出して動けなくなる描写と、兵士としての暗い過去の説明から、PTSD様のものが本編でも想定されている。

    ベトナム戦争の帰還兵の心の傷と社会復帰の難しさの問題は、米国におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の研究を進める大きな原動力になった。
    1943年生まれの高橋 良輔監督や、1947年生まれの吉川 惣司氏には、ベトナム戦争(1960年12月 - 1975年4月30日)は単なる歴史的事実ではなかろう。

    また、『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』では、ペールゼンとザキに対して洗脳行為が行われる。軍人に対する洗脳というのは、朝鮮戦争(1950年6月25日 - 1953年7月27日休戦)の時に話題になった行為だ。朝鮮戦争時の捕虜米兵に対して、共産主義を信じることをせまった行為を中国共産党が「洗腦」と読んでいたのが、日本語の「洗脳」の英語の「brainwashing」を経由しての語源である。ペールゼンとザキは精神を支配されることに共に抵抗するが、両者の迎える結末は異なっている。

    OVA版ではキリコは支配に反抗し、自らを虐げた者へ復讐することで、過去への決別としている。これはこれで男らしい。


    時系列順に吉川小説版三作の物語を再構成するなら、こうだろうか。

    小説版では、『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』は、戦災孤児として心の傷を負ったキリコが、辛い過去の記憶を家族に愛されたという記憶と共に取り戻すことが、物語の山場のひとつである。

    『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』では、一時は自分と同じ異能生存体ではないかと思った仲間を次々に失ったキリコが「異能生存体である自分は孤独な存在なのだ」と思い知らされる。

    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』は、過去にすでに別れを告げ、新しい愛に生きることを望むキリコが、その望みをいったん絶たれる話だ。この望みは本編ではかなえられる。

    小説版は愛による心の傷の回復に、重きが置かれているように思う。


    キリコとペールゼン

    この一連の作品はペールゼンがキリコを追う物語でもある。

    OVAだと上官としてキリコを支配しようとして、キリコとその仲間達を苦しめたペールゼンが復讐される話としてまとまっている。

    OVAだとレッドショルダードキュメントは、キリコがペールゼンに反抗する話だ。
    OVAだとペールゼン・ファイルズでキリコが得るのは、ザキを死に追いやった者として、ペールゼンに復讐する動機だ。
    OVAだとザ・ラストレッドショルダーは、キリコが仲間と共にペールゼンに復讐する話だ。フィアナに対する愛も動機だが、小説ほど明確に復讐が否定されてはいない。

    アニメを発売順に見るとペールゼンがラストレッドショルダーから、ペールゼン・ファイルズ劇場版に向けて、どんどん格好良くなっていくという印象を受ける。ペールゼン・ファイルズのペールゼンは支配者ではなく、知力を尽くして支配に反抗する人物だからだろう。


    小説版だとキリコを特別な存在と信じて惚れ込み、手に入れようとするペールゼンがその一方的な熱意の深さにもかかわらず、振られる話としてまとまっている。

    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』ではキリコを理想の兵士として自分のものにしようとするペールゼンと、それに反抗するキリコの葛藤が描かれる。
    『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』は、ペールゼンがキリコをウォッカムに奪われそうになる、三角関係の話だ。キリコは別にペールゼンのものにもならない。だが、キリコの真実を知るのは自ら研究したペールゼンだけ、という形でもペールゼンはウォッカムに勝利している。
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』は、ペールゼンがキリコをいったんはあきらめ、PS(パーフェクトソルジャー)という存在を作り上げようとする話だ。ペールゼンとキリコとPSの三角関係の話でもあるのだ。
    愛の反対は憎しみではなく、無関心。ペールゼンはこんなにも自分が関心を持つ相手に、自分が何らの関心も持たれていないことに逆上して、キリコを再度殺そうとする。だが、ペールゼンの死で物語は終わる。

    関連記事

    天女に恋した男、キリコ -装甲騎兵ボトムズと七夕伝説の共通点
    http://powderblue484.blog40.fc2.com/blog-entry-91.html

    吉川惣司脚本の構造と要素
    http://powderblue484.blog40.fc2.com/blog-entry-97.html
    スポンサーサイト

    タグ : ボトムズ

    コメント
    コメントの投稿
    管理者にだけ表示を許可する

    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。