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    商業出版物の感想や要望は誰に伝えるべきか

    同人誌やネットの二次創作なら、感想はネットで作家本人に伝えればよい。しかし、商業出版の場合は違うらしい。

    「ええと、メールやツイッターで著者に感想を送っても駄目なんです、ごめんなさい。本を出すかどうかを決めるのは出版社だもので。(中略)
    ぶっちゃけてしまうと、本書も親本『何がなんでも作家になりたい!』係宛の「手書きのお手紙」が編集部に、十年間たえず送られつづけたために、刊行の運びとなりました」
    新・何がなんでも作家になりたい!



    本や漫画の場合なら、出版社にあてた手書きのお手紙は微力でも無力じゃない。

    商業作家でもエゴサーチしている人がいて、Twitterで書名をつぶやくと作家の公式アカウントからRTやいいねが飛んでくることがある。作家に伝えたければ、ネットでだけ訴えるのでもいいかもしれない。が、出版社を動かすには上記引用文のように、出版社に感想のお手紙だ。アニメ会社やゲーム会社だって直接訴えた方がいいだろう。

    例えば、アニメ『星のカービィ』の全話DVD化を望む場合も、ネットでただつぶやくのでは効果はのぞめないだろう。
    こういう場合は「任天堂、ハル研究所、CBC、エイベックスに公式のメールフォームとお葉書でDVD化を要望しよう!」という活動をネットですべきなのだろうか。カービィミュージアムにアニメ関係の資料も展示したハルはまだしも、エイベックスあたりはアニカビのことをほぼ忘れてそうだ。

    電子版の読者がもし「物足りない」とお感じならば、スタッフは生存しているし、訴えようでは、高橋監督が死の床にあっても書くだろう。

    装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』電子版の吉川惣司氏の後書きより。



    この後書きは「こういうボトムズを書きたいんだけど、どう? 読みたいなら言ってくれれば高橋監督や自分をふくむスタッフが書くかもしれない」と、読めないこともない。この場合はホビージャパンにはがきを出せばいいのかもしれない。
    当然ながら、ボトムズのメイン脚本家であり、三冊のノベライズを担当した吉川惣司氏といえど、サンライズが許可を出さなければ書けない。

    公式二次著作物だと商業出版できるほどの「読者の要望」というものが必要なのだ。アマチュアのネット小説だと一人から要望されたというだけで書く作家はいる。だが、商業だとそれなりの数が「買います!」と宣言しないと、ノベライズ担当作家個人では動けない。
    二次創作のコミュニティに所属すると感覚が狂うけどな。

    この後書きの日付は、2016年8月。
    同年9月9日から、高橋監督のボトムズ小説を連載した、矢立文庫(サンライズ)には住所や感想用メールフォームがみあたらないので、つぶやけってことだろう。
    http://www.yatate.net/

    商業出版も電子版の普及にともない、ネットでの感想や要望も重視するようになっていくだろうが、今はまだ手書きのお手紙が強い段階なのだろう。
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    タグ : アニカビ ボトムズ

    メタナイト、空白の履歴書

    こちらの企画に@hosiniiruとして参加しました。



    ゲームの『星のカービィ』シリーズのメタナイトについてのわからないことを、主に市販の履歴書の書式をみながら考えてみた。

    わからないこと

    名前がわからない。メタナイトって本名だろうか? 騎士になってからの二つ名だったりしないだろうか。実はヘンリーとかいう名前があったりね。

    年齢は何歳か。人間で言えば20代か30代? それとも長い年月を生きても若いとか?

    性別は、男と女が分かれている種族の男、ということで果たしていいのだろうか。
    もし男と女がいる種族なら、父親は、そして母親はどんな人物か。

    住所はどこだろうか。メタナイトの家って公開されたことがないよね?

    プププランドに電話や携帯があるのかどうかよくわからないのだが、メタナイトにカービィやデデデが連絡したくなったら、直接出向くか、使者を立てるしかないのだろうか。

    出生地。どこで生まれたのか。プププランドの中か外か。ポップスターの中か外か。

    幼少期をどんな家庭で過ごしたのか。貧しい家庭か、上流階級か。

    学歴。どこで騎士の修業をしたのか。

    職歴。騎士として最初の主君はどんな人物だったのか。
    最初の主君と別れた理由は何か。
    その後、何回主君を変えたのか。

    どこでメタナイツ達と出会ったのか。

    どうやって、ハルバードを入手したのか。

    剣以外の特技は何か。

    読む本のジャンルはどのあたりか。工学や剣術などの実用書、歴史小説や詩集、句集、グルメガイドブックなど色々ありそう。

    プププランドを征服しようとした動機は?

    休日の趣味は何だろうか?

    一人暮らしか。それとも、誰かと一緒に暮らしているのか。ペットはいるか。

    毎日をどうやって過ごしているのか。彼の普段の仕事や役目は何か。

    一月の収入はどれ位か。出費はどれ位か。何に使っているか。


    まとめ

    考察というより、考察の前準備のような文章となった。一時間の時間制限もあるしね。
    本格的に考察するならば、この空白の部分をあれこれ推測するのだろう。
    そして、二次創作なら「この漫画の、この小説のメタナイトはこうだ」と作者自ら決定するのだろう。

    もしかして、ハル研究所にはこの空白の埋まった設定書があるのかもしれないが、公にすると縛りになるので秘密だろうな。

    この「キャラクターの履歴書」という発想はこちらが元になっています。

    何がなんでも新人賞獲らせます!: 作家の道をまっしぐら!! 鈴木輝一郎』

    赤く塗られた肩 -レッドショルダー三部作についての考察

    らくしゃさ@赤い耐圧服のドクペ さんの企画に@hosiniiruとして参加させていただきました。




    お題は「赤」ということなので、OVA版と吉川惣司小説版のレッドショルダー関連3作品について簡単に考察。ネタバレあり。

    レッドショルダー関連三作品のリスト

    吉川惣司著の『装甲騎兵ボトムズ』のノベライズの刊行はこの順番だ。
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』(1988年6月)
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』(1988年12月)
    『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』(2009年1月)

    しかし、アニメとして発売されたのは、この順番だ。
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』(1985年)
    『装甲騎兵ボトムズ レッドショルダードキュメント 野望のルーツ』(1988年)
    『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』(OVA版は、2007年から2008年。劇場版は2009年)

    作品中での時系列順に小説を並べるとこうなる。(OVAもタイトルが一部違うが同じ)
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』
    『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』


    帰還兵キリコの物語

    OVA版『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』では、「キリコの支配に対する反抗」がテーマだった。キリコは反抗的であったため、他の三人とともに前線に送られる。そこでそれぞれひどい目にあう。

    高橋監督へのインタビューだと、ボトムズ本編は戦争で心に深い傷を負ったキリコが、新たな仲間を得て、人間らしさを取り戻していく話だという。
    参考 VOTOMSは戦争に傷付いた男の社会復帰ドラマ?
    http://homepage3.nifty.com/mana/votoms-kiso-siryou2.html
    だから、上記のOVA三作で、キリコが戦災孤児として、若い兵士として、どれだけ辛い体験をしたかを描写したことにより、本編のテーマがより深くなった。

    キリコについては、高橋良輔監督自らが脚本を書いた回である、テレビシリーズの第4話の過去を思い出して動けなくなる描写と、兵士としての暗い過去の説明から、PTSD様のものが本編でも想定されている。

    ベトナム戦争の帰還兵の心の傷と社会復帰の難しさの問題は、米国におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の研究を進める大きな原動力になった。
    1943年生まれの高橋 良輔監督や、1947年生まれの吉川 惣司氏には、ベトナム戦争(1960年12月 - 1975年4月30日)は単なる歴史的事実ではなかろう。

    また、『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』では、ペールゼンとザキに対して洗脳行為が行われる。軍人に対する洗脳というのは、朝鮮戦争(1950年6月25日 - 1953年7月27日休戦)の時に話題になった行為だ。朝鮮戦争時の捕虜米兵に対して、共産主義を信じることをせまった行為を中国共産党が「洗腦」と読んでいたのが、日本語の「洗脳」の英語の「brainwashing」を経由しての語源である。ペールゼンとザキは精神を支配されることに共に抵抗するが、両者の迎える結末は異なっている。

    OVA版ではキリコは支配に反抗し、自らを虐げた者へ復讐することで、過去への決別としている。これはこれで男らしい。


    時系列順に吉川小説版三作の物語を再構成するなら、こうだろうか。

    小説版では、『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』は、戦災孤児として心の傷を負ったキリコが、辛い過去の記憶を家族に愛されたという記憶と共に取り戻すことが、物語の山場のひとつである。

    『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』では、一時は自分と同じ異能生存体ではないかと思った仲間を次々に失ったキリコが「異能生存体である自分は孤独な存在なのだ」と思い知らされる。

    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』は、過去にすでに別れを告げ、新しい愛に生きることを望むキリコが、その望みをいったん絶たれる話だ。この望みは本編ではかなえられる。

    小説版は愛による心の傷の回復に、重きが置かれているように思う。


    キリコとペールゼン

    この一連の作品はペールゼンがキリコを追う物語でもある。

    OVAだと上官としてキリコを支配しようとして、キリコとその仲間達を苦しめたペールゼンが復讐される話としてまとまっている。

    OVAだとレッドショルダードキュメントは、キリコがペールゼンに反抗する話だ。
    OVAだとペールゼン・ファイルズでキリコが得るのは、ザキを死に追いやった者として、ペールゼンに復讐する動機だ。
    OVAだとザ・ラストレッドショルダーは、キリコが仲間と共にペールゼンに復讐する話だ。フィアナに対する愛も動機だが、小説ほど明確に復讐が否定されてはいない。

    アニメを発売順に見るとペールゼンがラストレッドショルダーから、ペールゼン・ファイルズ劇場版に向けて、どんどん格好良くなっていくという印象を受ける。ペールゼン・ファイルズのペールゼンは支配者ではなく、知力を尽くして支配に反抗する人物だからだろう。


    小説版だとキリコを特別な存在と信じて惚れ込み、手に入れようとするペールゼンがその一方的な熱意の深さにもかかわらず、振られる話としてまとまっている。

    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』ではキリコを理想の兵士として自分のものにしようとするペールゼンと、それに反抗するキリコの葛藤が描かれる。
    『装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ』は、ペールゼンがキリコをウォッカムに奪われそうになる、三角関係の話だ。キリコは別にペールゼンのものにもならない。だが、キリコの真実を知るのは自ら研究したペールゼンだけ、という形でもペールゼンはウォッカムに勝利している。
    『装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』は、ペールゼンがキリコをいったんはあきらめ、PS(パーフェクトソルジャー)という存在を作り上げようとする話だ。ペールゼンとキリコとPSの三角関係の話でもあるのだ。
    愛の反対は憎しみではなく、無関心。ペールゼンはこんなにも自分が関心を持つ相手に、自分が何らの関心も持たれていないことに逆上して、キリコを再度殺そうとする。だが、ペールゼンの死で物語は終わる。

    関連記事

    天女に恋した男、キリコ -装甲騎兵ボトムズと七夕伝説の共通点
    http://powderblue484.blog40.fc2.com/blog-entry-91.html

    吉川惣司脚本の構造と要素
    http://powderblue484.blog40.fc2.com/blog-entry-97.html

    タグ : ボトムズ

    ひかわ博一先生のうつ病説を検討する

    最初に

    星のカービィ―デデデでプププなものがたり (てんとう虫コミックス)』という漫画を描いていたひかわ先生がうつ病かどうかの議論がネットでは古くからある。以下のサイトにまとめられているが、どちらの説にも欠点があり、定説とすると名誉毀損ものだろう。

    ひかわ博一
    http://www34.atwiki.jp/hikawakirby/

    両方の説を簡単に紹介する。

    最初のうつ病説は匿名掲示板に投稿されたレス。書き手の正体は不明で漫画家の名前もH先生と伏せ字。
    次の株の投機が楽しくなって漫画を描かなくなった、というのは前の説に反論する形でひかわ先生のアシスタントだったと自称する人物のブログに書かれた記事だ。かなりの長文。


    この問題のポイントはこのあたりだろう。

    1. 最初に問題になった匿名掲示板の投稿は、正体不明の投稿者によるものであり、そもそもH先生がひかわ先生のことかどうかさえわからない。
    2. いきなり仕事をやめたという点に関しては、うつ病の可能性もあるが他の可能性もある。
    3. 病名は医者がつけるもの。近しい人の発言でも、素人の「あいつはうつ病だ」や「うつ病じゃない」は、割り引いて考えよう。

    結論としては、匿名の投稿者や自称アシスタントの発言は、例え嘘がないとしても、あくまでも「その人の立場から、他人を見た一面の真実」でしかない。それが全てのように語るのは危険だ。

    1. 最初に問題になった匿名掲示板の投稿は、正体不明の投稿者によるものであり、そもそもH先生がひかわ先生のことかどうかさえわからない。
    発端は、「漫画家が編集者に虐げられる」というステレオタイプを描いた、匿名の投稿。しかも短い。
    ネットには他人が自分の嘘に踊るのが楽しいという人がいくらでもいるので、信じない方がいい。
    この匿名投稿が仮に投稿者の目から見た真実でも、「うつ病の原因は当時の担当編集者」というのが真実かどうかはわからない。うつ病の原因は一般に「不明」とされる。担当編集者がその人になった時、すでにその漫画家が病んでいたという可能性だってある。

    うつ病の人は、他人の言動に落ち込みやすい。物事や他人の言動を、ネガティブに受け取ってしまう病だからだ。
    よくいるちょっと他人の扱いが雑な人が、うつ病の人の目からは「疲れている私を自殺を考えるほどに追い詰めた人」ということになりかねないのが、心の病の怖さ。
    他人にきつくあたる側を免罪するわけじゃない。ただ、心の病にかかった人の「あの人はひどい人だ」というのを、そのまま信じるのは危険だ。病める彼らはひたすら人生が辛いのだ。

    だから、筆者はひたすら被害者側の視点で書かれている、最初の投稿は仮に嘘でないとしても、一方的な断罪であり、事情の全てを語ってはいないと考える。

    2. いきなり仕事をやめたという点に関しては、うつ病の可能性もあるが他の可能性もある。
    読者は漫画家としての作家の姿しかしらないから「漫画家として何かあった」の方に考えがちだ。
    でも、ひかわ先生は1967年生まれ。1987年にマンガ賞をとり、20歳ぐらいでデビュー。2006年の連載終了時点で、だいたい39歳ぐらい。
    この年の男性ともなれば、実生活で「親兄弟の不幸」や「妻子との問題」や「健康上の問題」があってもおかしくない。未婚でも恋愛の問題はありうる。
    ちなみにアニメ版『星のカービィ』の吉川監督は、アニメ制作中に奥様を亡くされている。漫画家やアニメ制作者も人間なので、私生活で色々あるものだ。
    しかし子供向けギャグマンガの作者コメントに「最近親の介護で辛いです」とか書いてあったら、マンガが楽しめなくなる読者は多いだろう。だから実生活で何かあっても、伏せられて当然だ。
    漫画家という仕事をやめたのには、その仕事上のこと以外の原因だってありうる、ということは一応確認しておきたい。もちろん私生活上の問題とも断言しない。

    もしうつ病だとしても、発症のきっかけは、仕事ではなく私生活の問題かもしれないのだ。


    3. 病名は医者がつけるもの。近しい人の発言でも、素人の「あいつはうつ病だ」や「うつ病じゃない」は、割り引いて考えよう。
    長年真面目に働いてきた人が、ある時期からいきなり、まともに働かなくなる、というのはうつ病の兆候として代表的なもの。これがこの「うつ病説」が消えない理由のひとつだろう。

    うつ病チェックにはよくこういう項目がある。

    仕事の能率が上がらず何をするにもおっくうですか
    本来は仕事熱心できちょうめんですか
    http://utsu.ne.jp/



    しかし、うつ病というのは、国家資格を持つ医師が本人に直接会って診断して、治療のためにつける病名だ。
    その時期、精神的に疲れていたというのがもし事実でも、病院で診断されていなければ「うつ病じゃない」ってことになる。多くの場合本人も自分がうつ病とか、認めたがらないしな。

    本人に近い人でも素人が「あいつはうつ病なんかじゃなく怠けていただけ」と言っても、自分は信じない。近しい人でも知らない心身や家庭の事情なんていくらでもある。精神科医によると妻がうつ病になっても、気がつかない夫というものはわりといるらしい。
    あなたが初期のうつ病になったとして、周囲の誰かががすぐ「これはうつ病だ。病院に連れて行こう」という対処をしてくれるだろうか。逆にあなたの家族や同僚がうつ病になったとき、あなたは「うつ病じゃなかろうか」と思ってそれに応じた対処ができるだろうか。
    自分だって、専門家じゃないから「もしかして?」と思う以上のことができる自信なんてない。うつ病の知人がいたが、処方された薬を飲んでお買い物位ならできる状態の彼を、浅い付き合いの誰がうつ病と思うだろうか。

    「あいつはうつ病だ」という話も「あいつはうつ病ではない」という話も、医師の診断を添えた本人からの公式発表がない限り、信じるに値しない。しかしそんな発表をするのは、本人にとって大変な話だ。だから「そんなことで仕事をやめるなんて」という断罪は気が早すぎる。
    本人が公表していないのなら、他人があれこれいうのは名誉毀損になる可能性もある。
    名誉毀損法というのは著作権法と同じく、ネットではあまり守られない法律だが、厳密に適応すると、かなり厳しい法律。
    例え事実でも、他人の評判を下げるようなことを公然と言ってはいけない、というのは当たり前のことなんだけどね。

    それに、自称アシスタントさんのブログの文章は、精神障害に理解があるとは思えない文章だ。多少詳しい人なら、本物のうつ病患者が「本人のやる気がないだけだ。甘えだ。逃げだ」と周囲に言われる事があるのは知ってるだろう。判断が難しい問題なのだ。
    自称アシスタントさんは赤塚先生のアルコール使用障害について、「つらくて悩んで逃げた結果だろうとも言えるが、逃げたのか楽しんだのか、公に明らかです。楽しみを追求した結果がアル中」といわゆる「作家の苦悩」をまるっと否定する文章を書いておられる。
    株にはまって仕事を失ったとか、うつ病の代わりに"ギャンブル障害"とか別の病名がつくかもしれない話なのだ。株と賭け事は違うが、近い話ではある。また、いわゆる躁うつ病だと、躁状態の時に浪費に走る人もいる。株投資が原因だとしても、それは心の病と無関係という話にはならない。
    "ギャンブル障害"の半分近くは、うつ病をふくむ"気分障害"を併発しているという。うつ病やそれに似たものと賭け事の関連性は高い。参考『アディクション・ケースブック ‐「物質関連障害および嗜癖性障害群」症例集‐
    だから、話がうつ病か、株にはまったかの二択になってしまうのがそもそもおかしい。両方間違いという可能性とともに、両方という可能性だってわずかながらある。しかし、これは二択批判であり、併発説を本気で主張しているわけじゃない。
    また、絵が汚くなったのは、このアシスタントさんをやめさせたからという話があるが、もしそうだとしても編集部に相談すればどこからか新しいアシが来ただろう。そこにはやはり何らかの気持ちなり、意思の問題があっただろう。

    極端で有名な例を出すけど、太宰治を「借金しまくりの薬中」と言っても、「周囲に迷惑をかけまくった人間失格の男」と言っても、「境界性パーソナリティ障害という、心の病を抱えていた」と言っても、「自らの苦悩を小説に綴った偉大な作家」と言っても、それぞれ正しいとは思うんだよね。
    http://homepage1.nifty.com/yasuki-a/Part2-dazai.htm

    「作家の問題行動」に対して「身勝手な人物だった」という意見と「苦悩があった」という意見の両方がある状況というのは赤塚先生にもある。このアシスタントを名乗る人物の、赤塚先生に対する意見は後者を否定する形での前者だ。
    筆者は前者を否定まではしないが、どちらかというと後者に重きを置く「文学論」的な方向の考えだ。
    ひかわ先生に関するネットの議論も煮詰めていけば、そういう「身勝手」と「苦悩」の、よくある文学的議論にいきつきそうな気もするんだけど、太宰先生や赤塚先生と違って存命人物だからね。


    まとめ

    「長い間真面目に働いてきた人が、ある時期からいきなり、これまでのように仕事をしなくなった」という点から「何らかの心の病」という可能性はある。しかし、そうでない可能性も大きい。
    そして、「心の病」にも色々な種類があるので、「もし心の病であるならば、それはうつ病に違いない」ということにはならない。適応障害かもしれない。
    「心の病」の原因も色々なので、「H先生が心の病になった原因は、担当編集者の言動」という話も、そのまま受け取れない。心の病になったH先生が実在しても、残酷な編集者が実在するかどうかはまた別の話だ。

    そして「関係者の証言」は、二者ともあいまいな点がある。「H先生」じゃひかわ先生のことかどうか、わからない。
    また心の病の専門家でない人に「あんなの心の病じゃない」と言われても、鵜呑みには出来ない。

    というわけで、この問題は不明な点が多すぎる。
    「全て編集者が悪い」や「漫画家本人が悪い」というような、誰かを非難するネットの話はわかりやすくて好まれるが、現実はそれよりも複雑だろう。ひかわ先生本人からの公式発表がない限り、「真実はわからない」を正解とすべきだ。
    そして、公式発表も期待できないだろう。もはや彼は現役を退いたのだから、発表にさしたるメリットはない。そして、うつ病である、ないに関わらず、公式発表することでネットの上の誰かが「なぜもっとがんばらなかった」と非難する可能性もあるのが現状だろう。
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