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    マホロアソウルは「本当の自分が思い出せない」 熊崎Dのシナリオ小考

    こちらの企画に参加させていただきました。



    どうして熊崎信也ディレクターは「本当の自分が思い出せない」というシナリオを書くのか。
    ソウル化とか。トリデラのセクトニアやマスクドデデデ。ロボプラのハルトマンとかメタナイトボーグ。

    マホロアのソウル化の時はクラウン。トリデラのデデデは操られた時に仮面をつけていた。ロボプラのハルトマンも頭にヘルメット状のものをつけていた。ここまでは、「頭部に装着するもの」だ。トリデラのセクトニアは次々に寄生する体と顔を変えた。
    熊崎ディレクターは「支配する」ことを「その対象をつかむ」というように、絵で表現する。
    マホロアのマスタークラウン、セクトニア寄生後に、ポップスター全体に巻きつくワールドツリー、ロボボOPのハルトマンワークス本社。
    頭をつかむということは、頭を支配するということなのだろう。
    ハルトマンワークスに支配されたポップスターは、住民の多くが元の自分を忘れた。
    カービィを乗せたロボボもある意味「本当の自分を忘れた」存在だ。

    「本当の自分が思い出せない」……それは、「誰かが自分を支配していて、元の自分の記憶を奪ってしまったから」というのが、熊崎Dのシナリオだ。
    マホロアの場合は、カービィの勝利によってクラウンがとれた。
    マスクドデデデも、カービィの勝利によってマスクが外れた。
    メタナイトボーグも、カービィの勝利によって装備が外れた。
    セクトニアはポップスターを支配し奪おうとした者として、ポップスターから取り除かれた。
    ハルトマンも、ポップスターを元に戻すために、星の夢ごと倒された。

    どうやら一度、ポップスターの支配に成功してしまうと、元の自分には戻れないらしい。
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    脚本家ごとのエスカルゴン(短文版)

    アニメ版『星のカービィ』の脚本家は計11人いる。
    実は脚本家によってエスカルゴンの言動はかなり違う。
    だから、代表的な5名の脚本家ごとにエスカルゴンをわけて、まとめてみた。
    また、エスカルゴン回の担当脚本家は、途中で変更されている。

    第12話 『デデデ城のユーレイ』 国沢真理子
    第25話 『エスカルゴン、まぶたの母』 国沢真理子

    第39話 『忘却のエスカルゴン』 あんのうん
    第55話 『ある愛のデデデ』 あんのうん
    第78話 『発進! エスカルゴン・ロボ』 あんのうん
    第88話 『はだかのエスカルゴン』 あんのうん

    詳しい担当話数はウィキペディアのスタッフリストを参照。




    吉川惣司監督脚本回のエスカルゴン(吉川エスカルゴン)

    何があっても陛下のおそばにいるでゲス、という感じのエスカルゴン。

    エスカルゴンのキャラ造形は、吉川監督自身によるものと考えられるから、これがオリジナル。
    従順だが、無能な忠義者。
    デデデ以外に対しては、虎の威を借る狐。
    嫉妬深く、サスケなどデデデが気に入った魔獣と張り合ったりする。
    「この知性あふれる私よりも メーベルなんてインチキ占い女を信用するんでゲスか」(第41話『メーベルの大予言!前編』)も、このエスカルゴン。
    デデデとコンビで辛辣な台詞を吐く。「好きでやってる連中は給料安くて済むでゲスな」(第49話 『アニメ新番組星のデデデ』)
    デデデ大王のお気に入りになりたいという、高いハードルに挑む下僕。

    デデデに対して暴力をふるったことが、一回しかない。それはデデデが悪夢を見ている回でたたき起こした時であり、復讐ではない。
    吉川エスカルゴンがデデデに対して犯した最大の罪は、第38話 「読むぞい! 驚異のミリオンセラー」で、面白い本を音読してあげなかったことじゃなかろうか。その後、本をとりあげられるという形で復讐されている。
    後半以降、デデデを心配する描写が増える。
    吉川デデデはエスカルゴンをたまに助けるし、エスカルゴンとよく抱き合っている。
    だから、エスカルゴンが「私をそばに置いてくれているということは、陛下なりに私を親しい相手と思ってくれているはずでゲス」とか思っても、まるっきりの勘違いではない。
    吉川エスカルゴンは「陛下の機嫌がいい時は、いっしょにいて楽しい」「そして、別れると不安だ」と、メリット、デメリットをはかりにかけて別れないのだろう。

    代表的な回
    「第1話 出た! ピンクの訪問者」「第5話 怒れ! ウィスピーウッズ」「第6話 見るぞい! チャンネルDDD 」「第13話 ププビレッジ年忘れ花火大会」「第38話 読むぞい! 驚異のミリオンセラー 」「第41話 メーベルの大予言! 前編 」「第49話 アニメ新番組星のデデデ 」「第83話 魔獣教師3 」「第100話(最終話) 飛べ! 星のカービィ 」


    国沢真理子さん脚本回のエスカルゴン(国沢エスカルゴン)

    お子様な陛下の面倒は私が見るでゲス、という感じのエスカルゴン。

    国沢デデデとともに国沢エスカルゴンも臆病者で、よくくっついている。

    前半は復讐劇の主人公。
    国沢エスカルゴンはことのほか、デデデに対して反抗的だ。以下に主なエピソードを列記。

    第12話 『デデデ城のユーレイ』 デデデを鎖で拘束して刃物でおどす。
    第25話 『エスカルゴン、まぶたの母』勝手に王を騙る。
    第32話 『歯なしにならないハナシ』ハンマーで叩く。拘束して歯医者に連行。
    第42話 『メーベルの大予言! (後編)』 デデデの財産を横領。

    もし、エスカルゴンに焦点をあてる回の担当者がずっと国沢さんだったら、エスカルゴンは「普段は仲が良いが、時々カービィ達と組んで、デデデに仕返ししているキャラ」のまま最終回を迎えたかも。デレツンとでもいうのかな。
    後半でもデデデがひどい目にあったときに「ざまあみろ」と笑う事が多い。具体的には第42話や第61話『肥惨! スナックジャンキー』でそうしている。

    国沢エスカルゴンの大きな分岐点は、第42話になる。これから後は、デデデに対する明確な敵対行動が消えている。
    後半はだめ男に弱く、相手を見捨てられない人物として行動している。でも、「永遠に離れないと誓った夜をお忘れでゲスか〜」(第76話)の台詞の場面で、デデデに捨てられかける。
    デデデにお説教をしつつも、「陛下はだらしないから、私ががんばらないといけないんでげす」という共依存的な愛情を感じさせる。

    代表的な回
    「第12話 デデデ城のユーレイ 」「第25話 エスカルゴン、まぶたの母 」「第29話 激辛! ファミレス戦争」「第32話 歯なしにならないハナシ 」「第42話 メーベルの大予言! 後編 」「第46話 真夏の夜のユーレイ! 後編 」「第52話 悪魔のチョコカプセル! 前編 」「第61話 肥惨! スナックジャンキー 」「第66話 さまよえるペンギー 」「第76話 夢の恐竜天国! 後編 」


    野添梨麻さん脚本回のエスカルゴン(野添エスカルゴン)

    いつもかしずいてやってるけど、手綱を握っているのは実はこっちでゲス、という感じのエスカルゴン。

    野添エスカルゴンはかなり初期から、デデデを馬鹿にしている。特に容姿に関する罵倒が多い。「たとえ姿形は無様でも」(ハンマーで殴られる)第19話
    こういう発言をするエスカルゴンがデデデに殴られるのは、わかりやすい。
    エスカルゴンが、デデデに暴力をふるわれたから、おとなしく命令を聞く描写も多い。
    第59話のカップ麺の容器を口に突っ込まれた後とか。

    野添エスカルゴンは吉川エスカルゴンと同じく、デデデを殴ったりはしない。せいぜい料理に唐辛子を入れる程度。
    だが、野添エスカルゴンは「ワドルディ売ります」の回で「自分でやれば」という言葉を残して「(今、陛下に)見つかったら、どんなにこき使われると思うでげすか」と一度見捨てていた。
    国沢エスカルゴンやあんのうんエスカルゴンがデデデに捨てられたり、忘れられる側であることを考えると、見捨てる側に立ったのは野添エスカルゴンだけだろうな。これは野添デデデがエスカルゴンをそばに置きたがるからだろう。もし90話のデデデがエスカルゴンを抱えて寝ている描写が脚本段階から存在するのなら、両者共に身勝手だけど、エスカルゴンはデデデのお気に入りの、自分の方が偉いと思っている猫ってことになるんだろうな。

    「チンケだけど大王でげすぞ」
    「これは失礼 大王様でしたか」
    「そうぞい」
    「でも思考力0だから実権は この私にあるんでげす」
    第90話 『爆走! デデデス・レース (前編)』 から

    テレビのリモコンすら他人に操作させる主人に奴隷のように仕えることで、金と権力を手にして密かに楽しんでいるのが野添エスカルゴン。しかし第65話 『逃げてきたナックルジョー 』の隠し宝石に関する描写を見るに、野添デデデは、わかって許しているっぽい。

    代表的な回
    「第15話 誕生? カービィのおとうと 」「第19話 ナックルジョーがやって来た! 」「第21話 王女ローナの休日 」「第34話 究極鉄人、コックオオサカ 」「第47話 帰れ、愛しのワドルディ 」「第59話 最強番組直撃! 晩ごはん 」「第72話 ワドルディ売ります 」「第90話 爆走! デデデス・レース 前編 」


    山口伸明さん脚本回のエスカルゴン(山口エスカルゴン)

    私の発明で陛下をお助けするでゲス、という感じのエスカルゴン。

    デデデと仲良く悪巧みをしている。毒気は少なめ。健康的なかわいさがある。
    デデデと一緒になって他人の不幸を喜ぶようなところがあり、そこは悪役らしさか。
    デデデに対し、的確なツッコミと適切なサポートをする。
    見栄張りの山口デデデに、高級食材として客人用に料理されかけ、胡椒で反撃した。
    森で遭難してデデデに「愛していたぞい」と言われて「愛しているでげす」と言ったのは、このエスカルゴン。

    代表的な回
    「第16話 私を愛したサカナ 」「第24話 ニンジャ、ベニカゲ参上! 」「第27話 恋に落ちたウィスピーウッズ 」「第35話 栄光のプププグランプリ 前編 」「第48話 プププランド観光ツアー 」「第56話 わがままペットスカーフィ 」「第69話 ウィスピーの森のエコツアー 」


    あんのうんさん脚本回のエスカルゴン(あんのうんエスカルゴン)

    奪われる側から、いつか奪う側になりたいでゲス、という感じのエスカルゴン。

    酷使されつつも、デデデ陛下についていく。デデデは連れていく。
    デデデに対する発言が容赦ない。
    「陛下なんぞセコいただのお人好しなチンピラ。能天気なボウフラ。アホ丸出しの風船オヤジでぇ」(第95話)等。
    わりと常識的な発言が多く、視聴者の代弁的なツッコミをする。

    あんのうんエスカルゴンは、悲劇のヒロイン。

    第39話『忘却のエスカルゴン』城を追い出される。拷問もされる。
    第55話『ある愛のデデデ』「愛してるよ、陛下」と「ああ! この快感! 陛下はもう私のモノ! 今こそ1000倍で返す絶好のチャンス!」の回。愛とは暴力を伴う独占である。
    第78話『発進! エスカルゴン・ロボ』目の前で息子と思うロボを壊される。
    第88話『はだかのエスカルゴン』無理矢理脱がされる。
    第95話『デビル・カービィ!』目の前で愛している人が殺されかかる。

    あんのうんエスカルゴンは「悪い男が好き」という、好みに問題があるタイプ。
    ただ、例えば国沢デデデはよく抱き合っている割に、エスカルゴンを助けない。それと違い、あんのうんデデデはエスカルゴンをほぼ抱きしめないが、マイマイゴンと戦おうとしたり、エスカルゴンを暴走車からかばったりする。だから、あんのうんエスカルゴンは、吉川エスカルゴンや国沢エスカルゴンとは少し違う「他から守られる安心」をデデデに見いだしているのかも。

    代表的な回
    「第33話 え〜っ! 宇宙のゴミ捨て場」「第39話 忘却のエスカルゴン 」「第57話 パイを笑う者はパイに泣くぞい! 」「第63話 師走のカゼはつらいぞい! 」「第79話 ボンカースあらわる! 」「第88話 はだかのエスカルゴン 」「第95話 デビル・カービィ! 」

    タグ : アニカビ

    吉川惣司脚本の構造と要素(第二版)

    吉川惣司脚本のアニメを見たり、著書を読んだりして、吉川脚本および小説によくあるパターンをまとめた。オチの部分まで分析しているので、ネタバレに注意。

    はじめに

    吉川脚本を三行でまとめるならこうだろうか。

    大筋は英雄伝説。
    舞台設定は壮大なSF。
    心理描写にはテレパシーなどのSF設定や、トラウマなどの精神障害が絡む。

    もう少し長く語るなら、その典型はおそらくこのようなものだろう。

    大きな二つの力が争っている世界があり、さらに謎めいた第三の力があった。
    主人公は生まれながらに特別な才能を持ち、この世界を支配する強大な支配者に目をつけられる。
    主人公は世界を支配している邪悪な力に反抗する。
    主人公には謎があり、それを調査される。
    孤独な主人公は周囲に迫害される。
    監視の目をくぐり、敵と戦ううちに、主人公は仲間と出会う。
    仲間は若い男、若い女、年配の男の三名である。
    ヒロインは美人で勝ち気で優秀である。
    そして主人公と直接相対する、敵のリーダーは主人公の父親ぐらいの年齢の地位の高い男である。
    主人公は間抜けな敵の部下をだまして、小さな勝利を得る。
    敵の部下は上司によって罰を受ける。
    主人公は遺伝子操作で作られた、人とケモノをまぜたような敵と戦う。
    主人公は苦戦する。
    主人公を謎めいた人物が助けてくれる。
    主人公は戦士としての秘めたる力を発揮し、勝利する。
    主人公の敵は焼死。

    『ルパンvs複製人間』や、『装甲騎兵ボトムズ』や『SF新世紀 レンズマン(小説版)』の大枠はこう。アニメ『星のカービィ』の一話ずつもだいたいこんな感じ。『星のカービィ』の一話ごとの場合は「主人公の敵は焼死」じゃなくて「魔獣が爆発する」とか「デデデ大王が黒焦げになる」とかだな。
    以下の分析は主に男性主人公を念頭においているが、女性主人公の吉川作品もある。『スペースオズの冒険』とか『Mother』や『ガロン』や、伝記だが『メアリー・アニングの冒険』がそうだ。


    吉川脚本のよくあるパターンと神話の類型との簡単な照らし合わせ

    英雄となる主人公は身寄りのない若い男性である。(オイディプスのように捨て子や孤児)
    主人公は特別な血を引いている。(貴種流離譚)
    主人公は父親ぐらいの年の男と若い女をめぐって争う。(エディプス・コンプレックス)
    主人公を敵の王の女が助けてくれる。(王女メディアやアリアドネ)
    敵の王の側近として発明家がいる。(ダイダロス)
    主人公と敵の戦いの背後には神がいる。(『イリアス』ではゼウス)
    主人公は、魔物を差し向ける敵の王の試練に打ち勝つ。(イアソン)
    主人公は箱船で脱出(聖書のノア)
    ヒロインは聖母(キリスト教のマリア)

    解説

    実は、吉川作品には『Mother』のイブや、『スペースオズの冒険』のドロシーなど、少女の主人公もいるが、彼女らも一時的に親とはぐれてしまっている。

    主人公は王家につながる血筋、というのが神話ではお約束である。吉川作品ではレンズマンになった主人公の父親も有力なレンズマン候補だった、という設定がある。『機甲界ガリアン』では主人公のジョジョは王子である。

    父親ぐらいの年の男と若い女を争うというのは、典型としては「父を殺し、母と結婚する」オイディプス王の物語だ。吉川作品では、マモーと不二子とルパンの三角関係。『機甲界ガリアン』だと、若いままの母親であるフェリア王妃をジョジョがマーダルと奪い合う。

    神話では敵の王の娘が「妻にしてくれるなら、助けましょう」とか言って、敵の弱点を教えてくれたりする。メディアは魔術で英雄を助けた。吉川作品だとボトムズのフィアナあたりだろう。『機甲界ガリアン』だとヒルムカ。

    ギリシア神話のダイダロスはミノタウロスを閉じ込めた迷宮を設計し、イカロスの翼を発明した。ルパンのマモーは本人が科学者。ボトムズだとアロン・シュミッテル、グラン・シュミッテルあたりだろうか。星のカービィでは、エスカルゴン。

    ギリシアの英雄叙事詩は、神が生きていた時代の物語なので、英雄には敵が味方し、また神が敵にまわって苦難を与える。吉川作品ではボトムズのワイズマンあたりだろう。争いの背後に「神」がいるのは、ギリシア神話の時代からかわらないが、ギリシア神話の場合は女神が英雄に味方することも多い。吉川作品では敵であるにしろ、味方であるにしろ、「神」に相当する存在が、男性で唯一の存在であるのは、キリスト教的だ。

    ギリシア神話の英雄イアソンは火を吐く牡牛を従えるという試練を与えられた。また、彼が命ぜられて大地に竜の牙をまくと、武装した男達が生まれて襲いかかってきた。こういった怪物や人造人間のイメージが古いことがわかる。吉川作品に怪物や人造人間は多い。レンズマン『レンズマン バレリア星救出作戦』は、人工的に異種交配し、怪物や動物的な部分を持った人間を作る話だ。

    聖書のノアの箱船伝説は、近年は『ウォーリー』というピクサー映画になった。吉川作品では『ボトムズ』でのクエント編での宇宙船。『機甲界ガリアン』のマーダルの乗ってきた宇宙船。『Mother』の宇宙船や『星のカービィ』の戦艦ハルバード。『レンズマン』では主人公が宇宙船で旅立った後、故郷の星は破壊された。

    ヒロインは聖母というのは、未婚のヒロインが特別な幼児を育てるというパターンがあるからだ。具体的には『ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー』のフィアナとイプシロン。『機甲界ガリアン』のヒルムカとジョジョ。『レンズマン バレリア星救出作戦』のゼルダとバレリア人。『Mother』の思念体になったイヴと地球人。『星のカービィ』のフームとカービィ。詳細不明だが、『ガロン』もおそらくこれ。


    『レンズマン バレリア星救出作戦』に「比較神話学」という言葉が出てくるところからするに、吉川氏はルーカスが参考にした本として有名な『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)』あたりを同じく参考にしているのだろう。


    吉川脚本によくある出来事のリスト

    吉川脚本によくある要素を、もう少し詳しくリストとして並べてみよう。

    背景

    大きな二つの力が争っている世界があり、さらに謎めいた第三の力があった。

    大筋

    この世界には隠された真実があり、主人公はそれを求めて敵と戦う。
    この世界には謎があり、その謎をとく鍵を握る存在として主人公や、ヒロインが狙われる。
    主人公は世界を支配している邪悪な力に反抗する。
    主人公の敵の死によって物語は終わる。

    主人公

    主人公は他の誰も持っていないような才能を持っている。
    その才能は、彼が生まれながらに持っていたものである。
    主人公には出生や生い立ちに秘密や謎がある。
    主人公はいじめられる。
    主人公はしばしば誰かをだます。

    主人公の仲間

    主人公には仲間がいる。
    主人公の仲間はいずれも社会の枠組みを外れた者達である。
    主人公の仲間は3人組のことが多く、しばしば紅一点がそえられている。

    ヒロイン

    ヒロインは美人で勝ち気で優秀である。
    ヒロインは主人公より年上である。
    ヒロインは主人公を保護下に置く。
    ヒロインはさらわれる。
    ヒロインは敵のトップと関係がある。
    ヒロインは主人公と二人で宇宙船に乗る。
    ヒロインと主人公が抱き合って終了。

    真の敵

    真の敵は神のような存在である。
    真の敵の目的は世界の支配である。

    敵のリーダー

    敵のリーダーは主人公の父親ぐらいの年齢の地位の高い男である。
    敵のリーダーは狡猾で冷徹な知識人である。
    敵のリーダーは主人公に深い関心を持っている。
    敵のリーダーには愛着を抱く相手がいる。

    敵の部下

    敵のリーダーには部下が付き従っている。
    部下は上司に認められたい。
    敵の部下はしばしば間抜けである。
    敵のリーダーは部下に容赦がない。
    上司の寵愛をめぐって、男同士の三角関係がある。
    悪役の受難場面は長い。

    その他の登場人物

    主人公が直接戦う敵は、人工的に作られた生命体である。
    敵と主人公の間に謎めいた人物がいる。
    人を調べる人物がいる。
    最初から他の主人に忠誠を誓うスパイ。
    悪役のそばにいる単眼の異生物。


    たびたび出てくる物語中の要素

    炎に焼かれる幻覚
    炎に焼かれて人が死ぬ
    トラウマ
    精神的な一体感
    精神感応
    精神操作
    精神への侵入
    思念体
    監視カメラ
    チョークスラム
    肥満体型のキャラが何かに必死にしがみつく

    個々の要素の解説と具体例

    背景
    大きな二つの力が争っている世界があり、さらに謎めいた第三の力があった。

    アストラギウス銀河を二分するギルガメスとバララントは、もはや開戦の理由など誰も知らない戦争を100年も続けていた。『装甲騎兵ボトムズ』


    ボトムズの場合はこれにボローたちの秘密結社が加わって、3つの勢力争いということになる。

    『ルパンvs複製人間』の場合はアメリカ対ロシアの冷戦構造に、マモーという謎の力が加わる。
    『SF新世紀レンズマン』もレンズマンとボスコーン軍団の対立に、ミステリアスなアリシアの力が加わる。
    『機甲界ガリアン』は、征服王マーダルと反マーダル勢力の対立に、高度文明連合というミステリアスな存在が絡む。
    『星のカービィ』は「ホーリーナイトメア社」対「星の戦士」という構図だ。これにナイトメアの側だが、忠実とはいいがたいデデデ大王の陣営が加わる。むしろ主人公の所属する「星の戦士」が謎の秘密結社のような感じである。
    これはパックスアメリカーナの時期の作品らしく、ホーリーナイトメア社対デデデ大王の構図は「アメリカ」対「それと協力関係にある独裁国家」の話とも読める。

    大筋

    この世界には隠された真実があり、主人公はそれを求めて敵と戦う。
    この世界には謎があり、その謎をとく鍵を握る存在として主人公や、ヒロインが狙われる。
    主人公は世界を支配している邪悪な力に反抗する。


    作劇術の基本として、「謎あるいはハードル」と小説家の鈴木輝一郎先生は述べている。
    https://www.youtube.com/watch?v=PLTCKfwdmVc&feature=youtu.be&list=PL-BQwr5kHBNBOzs2rrowo-Q5W-tZMvNpS

    この大筋は主人公や敵側の目的として「謎を解く」を設定している。
    ルパンは「自分がクローンかどうか」を気にしていた。
    キリコも「異能者とは、PSとは」という謎を追っていた。
    ジョジョも「自分は何者か、母親はどこに」という謎を追った。
    カービィは一話ごとはともかく、全体としては、大きな謎がとける展開はなかった。
    隠された真実を探すのは吉川作品のパターン。最初はルパンとかキリコとか、男性主人公が探した。それが段々女性が真実を探す話に。星のカービィではフームが真実を探すヒロイン。最初は女性はゼルダのように「真実を知っているが隠している」役割のことも多かったような。

    また敵の目的を「支配」、主人公の目的として「支配への反抗」としている。主人公の超えるべきハードル(目標)として「この世界の支配者を倒す」を設定している。

    ルパン、ボトムズ、ガリアン、カービィに「支配への反抗」はある。

    主人公


    主人公は他の誰も持っていないような才能を持っている。
    その才能は、彼が生まれながらに持っていたものである。

    これは典型的なパターン。
    キリコは異能生存体。カービィは生まれながらの星の戦士。レンズマンのキムは他人からレンズを受け継げるという、前例のない人物。


    主人公には出生や生い立ちに秘密や謎がある。

    この謎解きの興味で、読者をひっぱる。
    英雄伝説によくある出生の秘密や、主人公は捨てられて放浪するとか、本当の親がわからないなど。『機甲界ガリアン』のジョジョはこの典型。ルパンの場合は自分がクローンかオリジナルか。
    「主人公の生い立ちには謎がある」は、トラウマの問題として表現されることもある。ファーストレッドショルダーのキリコやマザーのイヴはこれ。

    主人公はいじめられる。
    いじめというより、拷問されることもしばしば。
    これも童話や英雄伝説として典型的なパターン。
    キリコとかカービィとか。
    やられたあと、主人公がやり返すことで読者に爽快感を与える。

    主人公はしばしば誰かをだます。
    プロメテウスやオデュッセウスの昔から、人を欺いて勝利を得る主人公は多い。
    知恵比べで勝つ、ということなのだろう。
    ルパンはもちろんそうだ。
    ボトムズでも第7話とか吉川脚本回のキリコは本筋とは関係のないところで、人をだましていた。

    主人公の仲間

    主人公には仲間がいる。
    主人公の仲間はいずれも社会の枠組みを外れた者達である。
    主人公の仲間は3人組のことが多く、しばしば紅一点がそえられている。


    愚連隊的な男同士の友情が多い。映画版のルパンと次元五右衛門。ボトムズのキリコとムーザ、バイマン、グレゴルー。ポタリア、キデーラ、シャッコ。バーコフ、ゴダン、コチャック、ザキ。『機甲界ガリアン』では、チュルル、ウィンドウ、ヒルムカ。
    『星のカービィ』のブンとイローハニーホッヘもこの路線だろうが、あんまりこの4人で動かなかったな。

    また、主人公、ヒロイン、年配の男、若者の4人組がレンズマンとボトムズの本編(ココナ達)で共通する。星のカービィだとカービィ、フーム、メタナイト、ブン。

    ヒロイン

    ヒロインは美人で勝ち気で優秀である。
    ルパンの不二子。レンズマンのクリス。『機甲界ガリアン』のヒルムカ。美人扱いは受けていないがカービィのフーム。
    ついでに言うならば、吉川脚本のヒロインは基本的に人間である。人外男性×人間女性が多い。キリコ×フィアナは最初は人間男性×人外女性だったのだろうが、だんだんキリコの異能者としての側面が強調された。ちなみに手塚先生は基本的に人間男性×人外女性だが、男性の側も改造済みだったりする。松本零士先生は人間男性×人外女性。

    ヒロインは主人公より年上である。
    レンズマンのクリスは一歳年上。カービィのフームもカービィが「幼児」という設定なので、扱いとしては年上だろう。『MOTHER』のイヴ(12歳)とデュー(10歳)もこれ。

    ヒロインは主人公を保護下に置く。

    クリスは、世話をやくことがまったくなくなることに無意識に抵抗し、まだしたりないことがあるのではないかと、記憶をまさぐるのだった。
    SF新世紀 レンズマン (下巻) (講談社X文庫)


    母親役のヒロインが、幼児のように無力な男の子を、独善的な父親役から守るという物語。
    レンズマンのクリスとキム。小説版の『ザ・ラストレッドショルダー』のフィアナとイプシロン。カービィのフーム。『機甲界ガリアン』のヒルムカとジョジョ。
    母親代わりの献身という名の支配と所有は、吉川脚本の個性なんだろう。

    ヒロインはさらわれる。
    お約束。ルパンの不二子。レンズマンのクリス。カービィのフーム。『機甲界ガリアン』のチュルル。

    ヒロインは敵のトップと関係がある。
    これも神話やメルヘンのお約束。敵の王の娘が主人公に味方するというパターンの変形。ルパンの不二子。『レンズマン バレリア星救出作戦』のゼルダ。『Mother/最後の少女イヴ』のサラ。『ペールゼン・ファイルズ』のザキ。『機甲界ガリアン』のヒルムカ。
    男だが『ザ・ファーストレッドショルダー』のカースンもこれ。

    ヒロインは主人公と二人で宇宙船に乗る。
    自動車で結婚式場から、ハネムーンに旅立つカップルとか、もはや古典過ぎるが、そんなイメージだろうか。
    『レンズマン』のキムとクリス。ボトムズのキリコとフィアナ。

    ヒロインと主人公が抱き合って終了。

    若し、死と結婚というものがなかったら並大抵の小説家はどうして結末をつけるのだろうかと私は疑うのである。
    小説の構成 イー・エム・フォースタ


    ハッピーエンドなら、結婚とまではいかなくても主人公とヒロインが抱きあって終わる。
    悲劇ならば、抱き合ったヒロインの体はだんだんと冷たくなっていき……という死による終わりだ。小説版『ペールゼンファイルズ』のキリコとザキはこうだった。
    『ボトムズ』本編のキリコとフィアナは抱き合って終了。小説版レンズマンでも老師が主人公とヒロインの抱き合う姿を幻視するのが終わりの場面だ。
    ウィキペディアによると、『ルパンvs複製人間』のエンディングで流れるのが『ルパン音頭』というのは、吉川監督の意思によらず決定していたようだ。もしロマンチックな曲が流せるのだったら、ルパンと不二子が抱き合って終了していたかもしれない。しかし、コミカルな曲だったので、ルパンと銭形が男同士抱き合って空襲の中を逃げ惑うオチだった。

    真の敵

    真の敵、というのは物語の中で「祖父」的な地位にいる者である。

    真の敵は神のような存在である。
    巨大な脳であるマモー。ボトムズのワイズマンがその典型。星のカービィのナイトメアも原作通りと言えばそうだが、このパターンに当てはまる。敵ではないが、Motherのメッセンジャーもこれだろうか。

    真の敵の目的は世界の支配である。
    お約束。レンズマンのヘルマス。ボトムズのワイズマン。星のカービィのナイトメア。

    真の敵は主人公に深い関心を持っている。
    ボトムズ本編のワイズマン。


    敵のリーダー

    敵のリーダーというのは、物語の中で「父親」的な地位にいる者である。

    敵のリーダーは主人公の父親ぐらいの年齢の地位の高い男である。
    『機甲界ガリアン』のマーダルはこの典型である。『星のカービィ』のデデデ大王もこの典型に沿う。
    『ルパン三世 ルパンVS複製人間』のマモーは父親というのは年齢が高いが、脳の方のマモーの年齢が高すぎるので、これにあてはまるだろう。
    『装甲騎兵ボトムズ』のペールゼンは、話によって「真の敵」だったり、「敵のリーダー」だったりする。

    敵のリーダーは狡猾で冷徹な知識人である。
    『ルパン三世 ルパンVS複製人間』のマモーや『ザ・ファーストレッドショルダー』のペールゼンや『機甲界ガリアン』のマーダル。

    敵のリーダーは主人公に深い関心を持っている。
    『ザ・ファーストレッドショルダー』のペールゼン。
    『ペールゼン・ファイルズ』の場合はペールゼンもだが、ウォッカムの役回り。

    敵のリーダーには愛着を抱く相手がいる。
    女性に限らない。男性や人以外の者であることも。悪役に人間味を出すためや、主人公に対立する動機付けのためだろうと思われる。
    ルパンのマモーの不二子に対する思い。
    ボトムズのボローのフィアナやイプシロンに対する思い。
    ボトムズのカンジェルマンのポタリアに対する思い。
    『機甲界ガリアン』のマーダルのハイ・シャルタットに対する思い。
    カービィのデデデの場合は魔獣。段々とエスカルゴンに傾いていくが。

    敵のリーダーは愛着を抱く相手に裏切られる。
    悪役の悲劇。「かわいそうに」と思うか「ざまあみろ」と思うか、は文脈と視聴者次第。
    不二子はルパンを選ぶ。
    ボローのフィアナやイプシロンに対する思いは届かない。
    ポタリアはカンジェルマンに裏切られたと思って対立する。
    ペールゼンもキリコに背かれ続ける。
    デデデもよく魔獣に裏切られる。

    敵の部下

    敵のリーダーには部下が付き従っている。
    会話をさせたりすることで、敵側の意図を視聴者にわかりやすくする。
    副官とか側近とかいわれる方々だな。
    マモーのフリンチ。スタッキーのゴードン。
    ゴン・ヌーとカン・ユー。ペールゼンとリーマン。ネハルコとラーキソン。
    『機甲界ガリアン』のマーダルとハイ・シャルタット。
    レンズマンのヘルマスとグリードル。
    デデデとエスカルゴン。


    部下は上司に認められたい。
    忠誠心が高く、上司を気遣う部下が多いのが吉川脚本の特徴。特に無名の部下が上司に「よろしいのですか?」とか聞いていたら、吉川脚本回だ。
    エスカルゴンは公式サイトでのキャラ紹介の冒頭が「大王に気に入られたい一心で」だ。
    http://www.hicbc.com/tv/kirby/character/esukarugon.htm
    ゴン・ヌーとカン・ユー。
    ペールゼンとリーマン。
    マーダルとハイシャルタット。
    デデデとエスカルゴン。

    部下は上司と個人的な関係を築くことがある
    『装甲騎兵ボトムズ』でカンジェルマン殿下は、かつてポタリアと「俺」と「おまえ」で話す仲だった。
    『機甲界ガリアン』でハイ・シャルタットがマーダルを「陛下」ではなく「あなた」と呼んだことがある。
    『星のカービィ』で、エスカルゴンがデデデを「陛下」ではなく「あなた」と呼ぶときがある。


    敵の部下はしばしば間抜けである。
    名のある側近ではなく、無名のキャラを出し抜く場合もある。ギャグの場合もあれば、反撃の糸口にもなる。
    フリンチ
    カン・ユー
    エスカルゴン

    敵のリーダーは部下に容赦がない。
    単に罰していることもあるが、人体実験とかもされる。
    グリードル
    エスカルゴン

    男同士の三角関係がある。
    父親がいて、息子が二人いる。
    父親のお気に入りは「秀才で従順な兄」と「天才で反抗的な弟」のどちらか?
    「天才」となるのが吉川シナリオだ。
    『ルパンvs複製人間』の頃から、この傾向はあるが、この時のシナリオは「主人公は父親ぐらいの年の男と若い女をめぐって争う」が中心なので、あまり目立たない。
    『装甲騎兵ボトムズ』のクメン編以降になると「天才で反抗的なキリコ」が地位の高い男達の注目の的になって、カン・ユーやロッチナ、キリイ、リーマン等の「秀才で従順な部下」に嫉妬される。
    『星のカービィ』第一話で、エスカルゴンはデデデにへつらうが、デデデはエスカルゴンを殴り、魔獣をかわいがる。しかしナイトメアという主人を持つ魔獣に、デデデは裏切られる。そしてデデデはエスカルゴンをつれて逃げる。これもこのパターンだろう。

    悪役の受難場面が長い。
    『装甲騎兵ボトムズ』でのボローやカンユーの受難場面は吉川脚本回で長い。
    『星のカービィ』のデデデとエスカルゴンも、吉川脚本回では長々とひどい目にあう。

    その他の登場人物

    主人公が直接戦う敵は、人工的に作られた生命体である。

    そこは巨大な飼育室で、数層の床がさらに無数の壁に仕切られ、なかには怪物どもがうごめいていた。
    どれも異種交配技術で創造された獣たちだ。
    『レンズマン バレリア星救出作戦』


    他に『ルパン対複製人間(クローン)』の複製人間。『ボトムズ』に登場する改造された人間であるPS(パーフェクトソルジャー)、『星のカービィ』の魔獣。


    敵と主人公の間に謎めいた人物がいる。
    ヒロインと兼ねていることが多いが、「師匠(ヨーダ的な)」の場合もある。

    師匠っぽい人物の例。
    Motherのメッセンジャー。
    レンズマンのアリシア人の老師。
    カービィのメタナイト。

    ヒロインっぽい人物の例。
    レンズマンのゼルダ。
    ボトムズのカースン。
    『機甲界ガリアン』のヒルムカ。

    人を調べる人物がいる。
    『メアリーアニングの冒険』は吉川氏自身が、実在する化石発掘人を調べて伝記を書いた本。

    著者らが感じたのは、日本とひと味違う欧米科学界の傾向で、第一線の研究者たちが研究対象のみならず、自然科学を「営む」人間をおおいに愛し、営々と研究している事実だった。


    この実際に他人の研究を参考にしながら、実在の人物を研究した吉川氏自身の経験が『ペールゼン・ファイルズ』のウォッカムのペールゼンという、先行する「キリコ研究者」への驚嘆の描写につながっているのだろう。
    他の具体例としては、『ルパンvs複製人間』の銭形。『装甲騎兵ボトムズ』のロッチナ、ペールゼン、ザキ。『機甲界ガリアン』のヒルムカやドン・スラーゼン。


    人というより、組織を調べていたがカースンもこの系列。


    最初から他の主人に忠誠を誓うスパイ。
    前の項目と関連する。
    ルパンの不二子は結果的にこれにあたる。
    レンズマンのゼルダもこれに近い。
    ボトムズのカースンはこれ。
    ボトムズのルスケはこれ。
    『星のカービィ』のメタナイトも、最初からカービィが目当てでデデデに仕えていた。

    悪役のそばにいる単眼の異生物。
    レンズマンのヘルマスのペットは、スミスの原作では犬と書かれている。
    しかし、吉川氏の小説版では単眼の生物である。
    ボトムズのクエント編の冒頭の吉川脚本回を見たら、アラン達のひざの上に単眼の毛玉が乗っていた。ただしこれは、後で目のように見えたのは口だったとわかる。
    『星のカービィ』ではデデデに仕えるワドルドゥ隊長や、ペットのスカーフィ(変身後)が単眼だ。


    精神に関わる要素

    炎に焼かれる幻覚
    Motherのイヴ。
    デデデ。

    炎に焼かれて人が死ぬ
    前の項目と関連する。
    ボトムズのボローは建材の下敷きになった上、炎に巻かれて死亡。
    ボトムズの鳥海脚本回だと、壁にぶつかって死亡だったりするから、登場人物の死因は脚本家の個性。
    おそらく、空襲のイメージ。

    母もだ――俺はそれを目撃した――母親の身体が炭化するまで燃えるのを。
    『ザ・ファーストレッドショルダー』


    オレ最後まで見てたんだよ
    かあちゃんの顔が火で むくれあがって まっくろにこげてくのをよ
    はっきりおぼえてるよ
    『四谷快談』手塚治虫 少年ジャンプ昭和51年4月12日号掲載 『紙の砦』収録 



    手塚治虫先生は自らの大阪大空襲での体験を『ガラスの地球を救え―二十一世紀の君たちへ (知恵の森文庫)』に綴っている。
    人が燃える光景は、吉川氏(1947年生まれ)のすぐ上の世代の手塚先生(1928年生まれ)にとって、実際に自らの死におびえながら見た光景である。

    トラウマ(心的外傷)
    過去の辛い出来事が想起不可能になり、それを無理に思い出させようとすると、錯乱状態に陥るなどのヒステリックな反応があるという、正しいトラウマ描写が多い。しかし『SF新世紀 レンズマン』から『ペールゼンファイルズ』までの30年近く「錯乱状態」を「心身症状」と書いているのは、いったいどこの本にあった記述なのか。

    『SF新世紀 レンズマン』の主人公、キムの父親はヘルマスの精神攻撃によって、深いトラウマを負い、レンズマンになる道を断念した。
    『ザ・ラストレッドショルダー』のキリコは、目の前で両親を焼き殺され、自分も殺されかけた。
    『Mother』のイヴは超能力を開花させるため、両親と引き離されて記憶を消された。彼女の悪夢は過去の記憶というより、未来予知。
    『星のカービィ』のデデデ大王には幼少期のトラウマがある。それが何かは誰も知らない。

    吉川小説の辛い記憶が統合されることによる回復は、フロイトの精神分析から続く路線。
    現在の精神医学では、無理に思い出させると、患者の自傷や自殺につながることもあるとして、記憶を取り戻すことには重点が置かれないはず。

    精神的な一体感
    主に同性間で強調される感情。

    ふたりは一心同体だった。どちらが欠けても現在のレッドショルダーはなかった。お互いに、考えていることは裏の裏まで知りつくしていたはずだった。
    『ザ・ファーストレッドショルダー』


    忠実な部下が敬愛する上司との距離が開いていくことを憂う場面。

    精神感応
    『レンズマン』や『MOTHER』等のテレパシーが存在する世界では、人の心を読み、支配し、一体化する描写が縦横無尽に展開される。

    《私たちは同じ夢を見られるはずよ、望むだけで!》
    サラが笑ったように見えた。
    地面が迫る。激突する直前に、サラと私は結ばれた。
    『Mother』


    この「結ばれた」はあくまでも精神的なものを指す。
    これは超能力少女である主人公が、テレパシーで敵側のエスパー少女と交信する場面。この後、敵側の少女は死に至る。精神的な一体感は、映像では表現しにくいものなので、小説版でのみ味わえる世界かもしれない。この場面は映像化された時は、抱き合っている。
    『レンズマン』のキムとウォーゼルもこういった関係だった。

    精神操作

    《わたしは、他の生命の意思をコントロールできるようになった。いまのわたしは、以前にくらべて、百倍も強力なレンズマンなのだ。》
    SF新世紀 レンズマン (上巻) (講談社X文庫)


    「銀河パトロール隊(レンズマン)」の小説は1937年、戦前の小説。正義の主人公がテレパシーで人民の心を支配する悪の宇宙人に挑む話だ。主人公は強いテレパシーで悪人達の心を逆に支配し、勝利する。こういう精神戦が多い。この流れをくむスターウォーズも、正義が悪人側の精神を制御する話が多い。これは、そういった原作の要素を尊重したノベライズ。
    『ルパンvs複製人間』のマモーが不二子を操る場面。
    『星のカービィ』もデデデはアニメの第一話から最終話まで、特に吉川脚本回で精神を操られていた。原作でもよく乗っ取られはするのだが。
    『ペールゼンファイルズ』のザキ。
    相手の目を見て操る話が吉川脚本には多い。

    精神への侵入
    悪役側が秘密を暴こうとして、行うことが多い行為。
    『ルパンvs複製人間』でのマモーによるルパンの夢を調べる場面。
    『星のカービィ』の最終回でのナイトメアによるカービィの夢への侵入。
    『ペールゼンファイルズ』ではペールゼンが自我剥奪機にかけられる。

    思念体
    『レンズマン』のアリシア人。
    『ボトムズ』のワイズマン。
    『星のカービィ』のナイトメアも扱いとしては思念体。原作通り。
    『Mother』のメッセンジャー。

    監視カメラ
    『ルパンvs複製人間』冒頭のシャワールーム盗撮カメラ。
    『ボトムズ ザ・ファーストレッドショルダー』や『ザ・ラストレッドショルダー』『ペールゼンファイルズ』でも、主人公やヒロインの行動の監視用にモニター・カメラが使用されている。また『ザ・ラストレッドショルダー』でもヒロインの裸を盗撮するのに監視カメラを使った人物がいた。

    チョークスラム
    大柄な男が体格で劣る男の襟首や首を掴んで宙に持ち上げて、相手は苦しがるといった描写が多い。チョークスラムや喉輪落としと言われる技に近い。ダースベイダーっぽくもある。

    大男はインガソルのえり首をつかんで吊しあげた。(中略)インガソルは空中でもがいた。
    『バレリア星救出作戦』 


    衿首を摑まれたと思ったとたん、キリコは宙に浮き上がり、壁に叩きつけられた。
    『ザ・ファーストレッドショルダー』


    『機甲界ガリアン』(1984年)の吉川脚本回にも、マーダルがハイ・シャルタットを首締め宙づりする場面があった。『星のカービィ』の第一話は絵コンテも吉川惣司氏だが、デデデ大王がエスカルゴンの首を掴んで宙づりにしている。

    肥満体型のキャラが何かに必死にしがみつく
    『装甲騎兵ボトムズ』のボローは高いところから落ちかけて、イスクイに助けられた。同じくボローは高いところから落ちかけながら、キリコの尋問を受ける羽目になっている。『星のカービィ』のデデデはよくエスカルゴンとともに、何かに必死でしがみつく羽目になっている。悪役の受難を滑稽な絵にすると、こうなるのだろう。

    おまけ

    上記の分析は、切り刻みすぎて逆にわかりにくい面もあるだろうと思う。ということで、自作のプロットを載せておこう。

    「吉川惣司風シンデレラ」

    宇宙歴4315年、世界は機械帝国軍と辺境保守連盟に分かれていた。
    シンデレラの住む辺境地域も、戦争の末、機械帝国軍の支配下に置かれることになり、新たな支配者であるペロー大佐(王)が任官する。
    シンデレラは実の両親と引き離されて、科学者である継母に育てられていた。
    機械帝国軍の実態と自らの出生の秘密を探るべく、シンデレラは軍事要塞(王城)への侵入を決意。
    自然保護を訴える謎の組織の一員(魔女)が、シンデレラにスパイとしての装備を調えてくれる。そのひとつが大量のデータを記録できるクリスタルの靴。
    小柄な年配の男(ねずみ)と若い大柄な男(馬)が、仲間としてシンデレラのお供をする。
    シンデレラ達は、ペロー大佐の任官パーティに紛れ込む。
    ペロー大佐の息子ウィリアム中尉(王子)は、若く美しい男だが年齢不相応の幼児性を持つ。それは、彼の精神にも肉体にも人為的な改造が施されていたためであった。
    シンデレラは情報収集のため、ウィリアム中尉に近づくが、二人きりでいる時に辺境保守同盟の残党による襲撃があった。
    混乱の中、シンデレラ達はウィリアム中尉を安全な所へ逃がし、自分達も脱出する。
    その際、様々なデータがつまったクリスタルの靴を落としてしまう。それをウィリアム中尉が拾う。
    ペロー大佐の副官は、シンデレラが色々と探っているのに気がつき、彼女を処分しようと遺伝子操作によって生み出された化け物を差し向ける。
    ウィリアムは化け物にとらわれたシンデレラを助けようとして、重傷を負う。
    化け物との戦闘の中で、シンデレラのテレパスとしての能力が目覚める。
    実は彼女が実の両親と引き離され、継母に育てられていたのは、この超能力のためであった。彼女の強大なテレパシーは、化け物を倒し、要塞中を混乱に陥れる。副官はこのあたりで死亡。
    シンデレラの仲間である小柄な年配の男と若い大柄な男が仕掛けた爆弾により、ペロー大佐は焼死。軍事要塞は崩壊。
    瀕死のウィリアムとシンデレラは、カプセル(カボチャの馬車)に乗って脱出。
    彼らがどこの星へ向かったのかは誰も知らない。
    <終>

    何だろうこの圧倒的な往年のSF感。
    私のコピー能力は微妙だろうが、骨格にそう狂いはない……と、思う。
    まあ私以上に吉川作品に精通している人からすれば、「違う、そうじゃない」と思う所はあるだろうな。

    私のオリジナリティを捨て去ることを目的に書かれた、このプロットから小説を起こして、なろう系あたりに投稿したら、面白いつまらないは別にして、「オリジナル」という扱いしか受けないだろう。誰がこれを見て『装甲騎兵ボトムズ』に似ているとか言うだろうか。
    全力で似せてるのだけれどね。
    アニメ版『星のカービィ』に似ているとかいう人は、天才か頭がおかしいレベル。シンデレラ(フーム)魔女(メタナイト)王子(カービィ)で、わりとアニカビの最初の数話と最後の数話そのまんまなんだが。特に小柄な年配の男(ダコーニャ)と若い大柄な男(カワサキ)が要塞に爆弾を仕掛けるとかな。
    人は見た目が9割。ましてやアニメキャラなんて。カービィとイプシロンの見かけは似ていない。

    『スターウォーズ7』に似ているという人は、かなり鋭いと思う。あるいはファンタージ全盛の現在で、SFというと、スターウォーズしか思い浮かばない人なのかも。捨てられて超能力を持つ女主人公と幼児的な王子様の話という点などが共通する。しかしそれは神話やメルヒェンや古典SFの領域なんだ。

    大塚英志はこのように他人の作品から骨格を抜き出して、世界観を変更すればオリジナル小説が書けると小説家志望者に言っていた。私達が普段読んでいる「オリジナル小説」もこういった、コピーによってできあがっているものが多いのだろう。
    不出来なコピーこそオリジナルだよな。


    後書き

    学術の世界なら、吉川惣司脚本作品を全部見てから書き始めるのだろう。
    しかし今回は見切り発車。
    「お金も時間もないんだから、しょうがないでげしょうが」『星のカービィ』第49話 より。

    それから私は『星のカービィ』以外は原作に詳しくない。カービィなら原案で監修の桜井政博さんのゲームはあらかたやったし、著書も全部読んだ。だから、「このあたりは桜井さんに由来する要素」とある程度見当がつく。だが、高橋良輔監督には詳しくない。川尻 善昭監督にも詳しくない。スミス版のレンズマンは読んだ。できるなら、ここら辺も調べないと、ボトムズの中の吉川要素と高橋要素を安易に混同してそうだ。
    原作がないという意味での、オリジナル作品がひとつも商業的に発表されていない、アニメ監督や脚本家を論じた文章が少ない理由がよくわかる。
    今回の分析もノベライズが中心となった。

    追記 8月17日 ガリアンを見たので、加筆修正した。

    参考資料

    書籍
    SF新世紀 レンズマン (上巻) (講談社X文庫)
    SF新世紀 レンズマン (下巻) (講談社X文庫)
    バレリア星救出作戦 (講談社X文庫―Galactic Patrolレンズマン)
    装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー
    装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ小説版
    MOTHER 最後の少女イヴ オリジナルストーリー
    メアリー・アニングの冒険 恐竜学をひらいた女化石屋 (朝日選書)


    映像(一部)
    ルパン三世「ルパンVS複製人間」[Blu-ray]
    LENS MAN [VHS]
    装甲騎兵ボトムズ DVD-BOXI
    EMOTION the Best 機甲界ガリアン DVD-BOX [DVD]
    星のカービィ Vol.1 [DVD]

    タグ : アニカビ ボトムズ

    奪う桜井デデデと奪われる熊崎デデデ

    穏当に表現すれば、「ゲームディレクターごとのデデデの違い」というのがこの文章のテーマである。しかしあえて結論をタイトルにした。


    桜井デデデ

    桜井政博ディレクション作品のデデデ大王の役割は「奪う者」である。

    初代『星のカービィ』

    ある日の晩、丘のむこうの「デデデ山」から、くいしんぼうで有名な「デデデ大王」とその手下たちがやってきて、一晩でプププランドの食べ物という食べ物をドロボウしてしまったのです。
    そしてそれどころか、その国に伝わる空飛ぶ秘宝「きらきらぼし」までも奪いさってしまったのです。※取扱説明書より
    星のカービィプププ大全―20th Anniversary (ワンダーライフスペシャル)』からの孫引き


    デデデが奪おうとして、奪われる話。カービィは、デデデに奪われた食べものを奪い返すために、それ以前からデデデのものであった城を奪い、本人を身一つでふっとばし、泣かす。

    その後許したらしいが、このゲームのメインストーリーではそうなる。


    『星のカービィ 夢の泉の物語』
    デデデがスターロッドを奪ったことにより、人々の夢が奪われたと思ったカービィが、デデデからそれを奪い返そうとする。

    実は真の「奪う者」が他にいて、デデデは「奪う者」ではなく「守る者」だったという話。ただし、この話ではデデデはカービィからスターロッドを守れず、奪われた。だが、カービィに協力することによって、ナイトメアからプププランドを守ることには成功した。


    『星のカービィ スーパーデラックス』に収録の「グルメレース」
    カービィとデデデがレースという形で食べ物を奪い合う。

    桜井氏のこのシナリオでは「デデデとカービィは何かを奪い合うライバル」ということになる。カービィが負ければ「デデデに食べ物を奪われた」という話になる。
    熊崎デデデも時として「ライバル」としてカービィに勝負を挑んでくるが、熊崎氏のシナリオには「奪い合う」要素はほぼない。詳しくは後述する。

    同時収録のメタナイトの逆襲は「プププランドを奪おうとしたメタナイトから、ハルバードを奪う」という話で、初代カービィと似た構成。

    『スマッシュブラザーズX』内の「亜空の使者」
    スマブラの亜空の使者でもデデデの役は、カービィから見ての「奪う者」である。
    デデデとしては「守るつもりだったが、カービィに奪ったと思われた」という話で、夢の泉と共通する。
    亜空の使者では、結果的にカービィを守ることに成功したデデデが喜んでカービィを抱きしめ、その後強引にひきずっていく。
    カービィはきょとんとしているが、デデデの意識としては「自分が守ったものは、自分のもの」なのだろう。
    桜井デデデは幸運もあって、自らの策でカービィを守ることができた。
    下村デデデや熊崎デデデは基本的に、力で勝るカービィに守られる側である。それを考えると、力では劣れど策で守る桜井デデデは年長者らしい。

    カービィのコピー能力やヘルパーというシステムそのものが「奪ったものは自分のもの」というコンセプトだ。デデデもカービィと同じ桜井キャラらしく「奪う→所有する→守る」という生き方をしているのだろう。奪ってきた相手に、自分の顔のブローチをつけることによって、他の「奪う者」から守るというのは、それを象徴している。

    桜井シナリオでは、初代では単に他者から奪う者だったデデデが、夢の泉を経て、亜空の使者では他者を守る者になるという成長の物語が展開した。

    桜井氏のいう、「自称大王」というのは、勝手に「プププランドはわしのものだから、わしが守る!」みたいな主張をしている状態なのかもしれない。

    何でも奪って自分のものにする桜井カービィにとってのデデデの特別さは、本人を奪えないという点だろう。近年ではスマブラでのコピーもあるが、カービィシリーズではそうだ。
    『星のカービィ スーパーデラックス』の説明文は「デデデだいおう じきでんのハンマー!」だ。奪ったんじゃなくて、本人の好意で教えてもらった能力だというのが、きっと重要なのだ。聖域なのか、難攻不落なのか。
    熊崎氏にとっても、ここは重要ポイントらしく、熊崎氏監修のカービィシリーズでは必ずハンマーの説明にデデデへの言及がある。

    カービィwiki ハンマー
    http://ja.kirby.wikia.com/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC

    亜空の使者で桜井デデデの物語がいったん終わっていると考えるなら、桜井デデデはカービィのものではない。もっと対等な関係だ。

    もし、初代『星のカービィ』の時点で「実は……」があったとしたら、「食べ物を奪ったのは、夏場で腐りやすいから、城に造った大型冷蔵庫に入れて保存するつもりだった」とか、デデデが告白して終了かな。……これだとギャグマンガか。


    熊崎デデデ

    熊崎信也ディレクション作品のデデデ大王の役割は「奪われる者」である。

    『星のカービィ トリプルデラックス』 のオープニングムービーと『星のカービィ ロボボプラネット』のそれを示せば、証明が終わる気がするが、一応解説しておこう。

    『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス  大王の逆襲』
    おそらくこれがはじめての、熊崎氏がシナリオを書いたデデデの話。

    大王の逆襲は「デデデが奪われる」話だ。実際でも見せかけでも、デデデが何かを奪おうとしている話ではない。
    デデデがカービィが食べようとしたリンゴを奪ってかじる程度でもいいから、何かカービィから奪ったり、これから奪うという宣言をした方が、カービィがわざわざデデデを全力でつぶしに来る理由がはっきりしたような気がする。
    おそらく「デデデは負けず嫌いだから」で、カービィに挑戦する動機として十分としているのだろう。そしてカービィも「挑戦は受ける」と。
    桜井氏がシナリオを書いた『メタナイトの逆襲』だと「奪おうとしていたプププランドが手に入らず、逆に大切な戦艦が奪われる」という、メタナイト陣営の悲劇が描かれる。
    『大王の逆襲』だと、デデデの部下が次々と倒されるという形で奪われていき、デデデはおそらくは自分もまた倒されるという恐れで泣く。
    大王の逆襲はカービィにコピー能力があり、ヘルパーがいるシステムなので、倒された部下達はバンダナワドルディを除いて、カービィの力になる。
    この話のエンディングは、負けた後肩を落として歩くデデデの周囲に、バンダナワドルディをふくめ、たくさんのワドルディ達が集まってくるというもの。力で勝るカービィにもデデデから奪うことのできないものがあった、というのがテーマだろう。


    『星のカービィ Wii 』
    このゲームはデデデがケーキを持ったカービィを、追いかけている場面から話が始まる。
    あえて白紙の状態で見れば、あの情景はこの三種類に解釈できる。

    1 デデデのケーキをカービィが奪って逃げようとしている
    2 カービィのケーキをデデデが奪おうと追いかけている
    3 どっちのものでもないケーキを両方で争っている

    しかしこれはおそらく、さくま良子先生やひかわ博一先生のマンガに、よくあった光景の再演なのだろう。ということで、1の「デデデがカービィにケーキを奪われている」だと思われる。ケーキは地面に落ちて、結局どちらのものにもならない。

    『星のカービィ トリプルデラックス』
    デデデが奪われて、奪い返される話。カービィの目の前で、デデデがタランザにさらわれるところから物語は始まる。
    そしてカービィは正気を奪われた状態の、デデデと戦うことになる。

    デデデがさらわれる場面の画像(公式サイト)
    https://www.nintendo.co.jp/3ds/balj/stage/index.html

    桜井氏のカービィシリーズでは「デデデと何かを奪い合う」だったのだが、ここで「デデデを誰かと奪い合う」になった。
    この話はカービィがデデデを奪い返した後、デデデがカービィをセクトニアから奪い返す、という形でデデデにもヒーローとしての活躍の場を与えている。
    熊崎デデデは普段はかわいい系だが、いざという時は、本気を出して男を見せるという人物なのだろう。

    ifの物語である、デデデでゴー!は、デデデがフロラルドを「おさめてやるぜっ!」と、奪い(守り)にいく話。この時点では桜井風だ。ただ、最後のブラックデデデはデデデから何かを奪うために登場するのだろう。デデデがタランザに奪われたのは「人違い」が理由だったが、ブラデはデデデが目当てだ。無言劇なので、影が奪いたいのは本体の命か、誇りか、地位かは知らない。が、「全てを奪う」というような言葉で、表現されるようなものだろう。一般に「自我同一性(アイデンティティ)」と呼ばれるものにかかわっているのが、影との戦いのお約束だ。

    『星のカービィ ロボボプラネット』
    ロボプラのOPでデデデは、抵抗むなしく自らの国と城を奪われている。王様を倒すゲームであるチェスを遊んでいた王様が、現実に倒されるのが、ロボプラのOPである。いきなりのチェックメイトだ。しかし、本人は生きていた。

    公式ムービー
    【星のカービィ ロボボプラネット】 オープニング
    https://www.youtube.com/watch?v=ni4ow_axdAs

    国を奪われた後、デデデがスージーに細胞をも奪われていたことがわかる。しかしそれから造られたクローンは不完全なコピーだった。これは「全てを奪うことはできなかった」という話。

    熊崎デデデの物語は「奪われそうになったので、奪われまいと必死で抵抗する」という展開が主だ。そして「相手には彼の、全てを奪うことはできなかった」というのが結末である。大王の逆襲やロボプラはこうだ。おそらくトリデラもこれだ。


    下村デデデ

    下村真一ディレクション作品のデデデ大王の役割は「奪われたが故に、奪う者」である。

    『星のカービィ 2』および、『星のカービィ 3』
    デデデ大王が「他人から奪い、それを奪い返される」という形をとらずに、ただ「奪われる者」になったのは、下村ディレクションの『星のカービィ 2』からだ。「操られる」という形で、デデデが全てを奪われる所から話が始まる。だから、熊崎氏がいきなりひっくり返したわけではない。『星のカービィ 3』もデデデの役割はほぼ同じ。
    『星のカービィ 2』および、『星のカービィ 3』でのデデデの奪われ方は「全てを奪われた」と言っていい。桜井デデデや熊崎デデデの物語のように「相手にはデデデの全てを奪うことは出来なかった」という大王の尊厳がない。

    『星のカービィ64』
    このゲームは、デデデの話では始まらない。デデデの初登場場面では、デデデが拾ったクリスタルをそのまま奪おうとする。そのため、カービィの目の前でデデデがダークマターに奪われる。しかし、カービィの力で奪い返される。その後、カービィと一緒に他の誰かを奪い返しに行く。

    この物語の構成は、「奪う者」である桜井デデデと「奪われる者」である熊崎デデデの中間にあるといえよう。この最初の「デデデがクリスタルを奪おうとする」に相当する場面がないのが、トリデラのメインストーリーである。



    アニメ版デデデ

    ウィキペディアによると、アニメ『星のカービィ』のパイロット版は「デデデとカービィが女を奪い合う」という吉川惣司監督らしい直球だったそうだが、本編ではそういう話はほぼなかった。視聴者の評判がよくなかったか。それとも、桜井氏が自分の中のデデデのイメージと照らし合わせてとめたのだろうか。
    結局、アニメ版第一話ではデデデはカービィからワープスターを奪っている。
    第5話「怒れ! ウィスピーウッズ」や第99話「撃滅! ナイトメア大要塞」を見るに、「他者から奪おうとするが、結果として側近のエスカルゴン以外の全てを失う」というのが吉川デデデなのだろう。

    星のカービィ (アニメ)
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%9F%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%A3_(%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1)


    結び

    ディレクターごとに「奪う」の内実は違う。

    桜井Dの場合は「食べる(吸い込む)」ことが奪うことだし、下村Dの場合は「操る(憑依)」が奪うことだ。熊崎Dはあえてパターンを固定していないのか、デデデは部下とか食べ物とか、身体の自由とか、正気とか、城とか国とか、細胞とか、色々と奪われている。一体次の熊崎Dの新作では、デデデの何が奪われるのか。
    なお、アニメ版の吉川監督の場合のデデデの奪うは「だまして巻き上げる」が多い。

    タグ : アニカビ

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