忘れられた生活 因幡の白ウサギ

    最近NHKが「おはなしのくに クラシック」と言って日本神話や古典をテレビ番組にしてる。子供達を日本文化に親しませようという、試みとしてはまっとうな番組。
    しかし、第10回 古事記「いなばの白うさぎ」を見たら、毛をむしられたうさぎが、堅そうな串つきソーセージみたいな蒲の穂(ガマのほ)の上をころころしてる。そんでぱっと毛が生える。

    しかし、これはおかしい。

    神話の解釈は様々だが、この神話のくだりには、大きくわけて二種類の解釈がある。

    1 蒲の穂は蒲団(ふとん)だ説
    2 蒲の花粉は止血剤だ説

    まず、お蒲団説。

    蒲の穂は、最初は串つきフランクっぽい形だけど、終わり頃はキツネのしっぽのようにふわふわもけもけになる。
    蒲の穂で画像検索
    これは毛をむしられたウサギがふわふわのおふとんに、くるまるという説。というか、水に濡れた状態でころころしたら、蒲の綿毛がついてもけもけウサギになるのではなかろうか。

    最初のかたいときでも、つぶせばしっとりもけもけなんだけど、NHKの映像では「実は蒲の穂は柔らかい」なんてわかんないよ。


    では、次の蒲の花粉は止血剤説について。

    古事記では、その部分は穂ではなく、蒲の花の上に寝転ぶと書いてある。
    蒲の花粉を止血剤として、この神話を解釈しているページも検索したらあった。

    NHKで表示されている古事記の文章も「蒲黄(かまのはな)」なので、これは古代の治療法なのかもしれないけど、それでも絵が違う。
    ガマの花の写真
    ウサギはこの緑と黄色の花の上で転がるべき。

    神話の解釈は様々とはいえ、堅そうな蒲の穂の上をころころしてるアニメでは、なんでそれで傷が癒えるのか、さっぱりわからん。

    現代日本人は神話の世界を、「当時の生活に密着したもの」ではなく「無から有を生む魔術」と解釈しすぎ。
    おかしいのは神話だからじゃない、当時の生活が失われたからだ。

    近代化と治水事業で、蒲が花を咲かせ、穂をそよがせる水辺はコンクリートになった。
    もはやいなばの白ウサギは、動物病院で人工皮膚を貼って貰うしかない。

    ついでに、神社庁監修の「おみやとかみさま」という絵本には、当時の治療法という解説の他に「昔の人は蒲の穂を蒲団や衣服にしていたからか」という解説があって、「そういえば、蒲団(ふとん)って最近は布団(ふとん)って書くけど、古くは蒲の字を使うよな」と気づいた。
    綿花は自生するもんじゃなし、そこらの蒲の穂をふとんの中綿に使えば、安いよね。

    ではわたしは、現代的なポリエステル綿の蒲団で寝ます。

    続きを読む »

    スポンサーサイト